世事抄録 壁画修復

 失われたバーミヤン東大仏の天井壁画の複製を展示する「クローン文化財」の企画展がこの夏、島根県立美術館で開かれる。東京芸術大名誉教授の宮廻正明氏率いる研究チームが最新技術で忠実に複製したという。その記事から高校時代のささやかな壁画修復の記憶がよみがえった。

 創立間もなかった母校は進学校として「追いつけ、追い越せ」の日々で、「併学制」と呼ばれた男女別クラス編成だった。体育祭が唯一の大きなイベント。この時ばかりは男女や学年の枠を取り外した班編成で盛り上がった。

 体育祭では何段も組んだ竹製の桟敷の背後に巨大な壁画を立てて競い合うのも恒例となっていた。3年の時、美術部の級友を中心にしたチームに参加した。彼の指導の下に元絵を分割して何枚ものベニヤ板に模写。角材で裏打ちして固定した。

 西洋画から題材を取った絵柄は芸術性もかなり高く満足のいく出来栄えだった。壁画を竹で組み立て縄を掛けて桟敷の後ろに引き上げようとしたら、角材の固定が甘かったのか崩れ落ちてしまった。壁画の下にもぐり必死に修復作業を続けたものの、壁画が立ち上がることはなかった。

 翌日の放課後、数人で集まりチームは解散した。外の雨を眺めながら誰も口数は少なく挫折感に包まれていた。その中にリーダーの宮廻画伯がいた。

  (出雲市・呑舟)

2018年5月24日 無断転載禁止