アキのKEIルポ 胸に山頂目指す高揚感 順位落ち重圧から解放

 「彼も今は苦しんでいますが」という言葉を、錦織は2週間前のローマ・マスターズ中に何度か口にした。

 ここで言う「彼」とは、錦織がローマの2回戦で対戦したグリゴル・ディミトロフ。昨年はATPマスターズやツアー最終戦を制し世界3位に達したディミトロフだが、その彼の今が、錦織の目には「苦しんでいる」と映っていた。

 全仏初戦後の会見で「けがをする前と現在の違い」について問われた錦織は、再びディミトロフの名を「去年活躍したのに、最近は勝ててない」選手として挙げ、そして「彼と似たプレッシャーが、自分の中にもあった」のだと言った。錦織がディミトロフの苦しみに敏感なのは、この1歳半年少のライバルの姿に、かつての自分を重ねていたからだった。

 そのプレッシャーが、今はないと錦織は言う。それはけがによりランキングが落ちたため、追う立場に身を置くようになったから。重圧の代わりに山頂を目指す高揚感が、今の彼の胸を満たしている。コート上では「困難なときも、このシチュエーションをどう組み立てていこうかとか、どう逆転するかを考えるのが楽しくもある」と言った。

 楽しむ錦織圭が見られる―。それこそがわれわれにとっても、極上の楽しみだ。

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 錦織取材を続けるフリーライターの内田暁さんが、パリ・ローランギャロスから報告する。

2018年5月29日 無断転載禁止