アキのKEIルポ フランス人選手破る センターコートで初

 ローランギャロスのセンターコート、そして相手はフランス人選手…となると、錦織圭ファンなら嫌な思い出が脳裏をよぎるに違いない。

 2015年、優勝候補の一角と目され挑んだ全仏では、準々決勝でジョーウィルフリード・ツォンガにフルセットで敗れた。客席上段の看板が落下し、試合が中断されるという前代未聞の状況下で、地元のスター選手を後押しするスタジアムの空気に敗れた一戦でもあった。

 2年後には同じ場所で、リシャール・ガスケに敗れる。幼少期から“小さなモーツァルト”と呼ばれ、母国の期待を特徴的ななで肩に背負ってきた天才肌は、センターコートでファンと幸福な関係を築き、錦織の夢を砕いた。

 「パリのファンは、時々クレージーになる」。そんな言葉を苦い笑いとともに錦織がこぼしたのは、一度や二度ではなかった。

 錦織はこれまでに多くの“日本人初”を築いているが、彼がそれらの記録に頓着することは全くない。だが今回の“センターコートの対フランス人選手初勝利”は、過去の“初”とは意味合いが異なる。悔しい記憶が宿る地で、難敵相手につかんだ勝利は、新たな初の扉を開く鍵になる-。そんな希望を、見ている者に抱かせる勝利だった。

(フリーライター・内田暁)

2018年6月1日 無断転載禁止