佐川氏不起訴/真相は不透明なままだ

 学校法人・森友学園への国有地売却に関する財務省の決裁文書改ざんを巡り、虚偽公文書作成容疑などで告発された改ざん当時理財局長の佐川宣寿前国税庁長官について、大阪地検特捜部は不起訴処分にした。併せて8億円余りの不当な値引きにより国に損害を与えたとして背任容疑で告発された近畿財務局担当者の立件も見送った。

 捜査終結を受けて財務省は近く改ざんと、学園側との交渉記録廃棄の調査結果を公表。佐川氏を含め理財局、財務局の幹部や職員らを処分する。政府、与党はこれを「区切り」に森友問題の収束を図る構えを見せている。しかし疑惑の核心である8億円値引きの経緯は不透明なままだ。

 一連の告発を手掛けた弁護士グループや市民団体などは不起訴処分を不服として検察審査会に審査を申し立てるとみられ、審査会の判断次第で裁判所が指定した検察官役の弁護士による強制起訴を経て法廷で経緯の検証と解明が進められることになる。野党も加計学園問題と合わせて攻勢を強めている。

 財務省は先に膨大な改ざん前文書や交渉記録を国会に提出し「これが全て」と説明したが、交渉記録に欠落があり、一部には改ざんの疑いまで出ている。政府の責任において全ての文書を速やかにそろえ、真相解明に向け仕切り直しをする必要がある。

 昨年2月の国会で理財局長だった佐川氏は野党から森友学園側との交渉記録の提示を迫られ「廃棄した」「ない」と突っぱねた。こうした答弁と整合性を取るため理財局の一部職員が中心となり、その年4月にかけ14件の決裁文書で改ざんが行われ、交渉記録の廃棄も進められたとされる。

 改ざんは佐川氏が指示したとされ、交渉経過のほか、学園が開校を目指した小学校の名誉校長に一時就任した安倍晋三首相の昭恵夫人や口利きをした複数の政治家に関する記述が削除された。ただ借地・売買契約の日付や金額など決裁文書の根幹部分は変わっておらず、特捜部は虚偽とまでは言えないと判断した。

 一方、背任容疑については、財務局担当者が自分や学園の利益を図るため不当な値引きで国に損害を与えたと立証する必要があった。しかし値引きの根拠となったごみ撤去費の算定に明確な基準はなく、ごみの影響で開校が遅れた場合には損害賠償を請求する意向を学園側が示していたことなどから、過大な算定で損害を与える意図は認められないと結論付けた。

 その結果、交渉記録廃棄も含めて誰一人、刑事責任を追及されなかった。ただ麻生太郎財務相が以前、国会で答弁したように「改ざんといった悪質なものではないのではないか」ということにはならない。1年以上も「記録はない」と繰り返して疑惑解明を阻み、国会と国民を欺き続けた責任は重大だ。刑事責任とは別に、その所在は明確にしなければならない。

 さらに特捜部は値引きの根拠であるごみ撤去費算定を不適切と認定するのは困難とする一方、首相が先に贈収賄のような関わりはないとした夫人の「関与」を巡る官僚の忖度(そんたく)疑惑については「捜査の内容に関わるので答えられない」とした。そこをうやむやにしては疑念は晴れない。

2018年6月2日 無断転載禁止