アキのKEIルポ 楽しむ気持ち忘れずに 観客笑顔にさせるプレー

 とても楽しそうだな-。3回戦でG・シモンと戦う錦織を見て、真っ先に感じたのは、それだった。

 ミスのない相手との長い打ち合いは、本来なら苦しいはず。だが変幻自在のショットで相手を翻弄(ほんろう)し、スーパーショットを決めてはおどけたような表情を見せる彼の姿は、見る者も笑顔にさせる妙味に満ちていた。

 そんな錦織の姿を見て、そういえば、と思い出したことがある。

 錦織は子どもの頃、友人と対戦する時、どうしても勝負に徹しきれなかったという。そんな彼に「コートの中はテレビゲームと一緒。日常とは違う世界なんだ」と助言したのは父の清志さんだった。

 錦織のテレビゲームの腕は有名で、特に対戦型ゲームなどでは、パワーは低いが技に富む玄人好みのキャラクターを好んだ。モニターの中で痛快な逆転劇を楽しそうに演じる息子を見て、コートでもその心を持ってくれればというのが父の思いだった。

 シモン戦での錦織は、恐らくはテレビゲームのモニターを操っていた時と同じように、心から“ゲーム”そのものを楽しんでいるようだった。そしてそれこそが、今大会の錦織が心掛けている点でもある。「楽しむ気持ちを忘れずに」-。いよいよローランギャロス2週目が幕を開ける。

 (フリーライター・内田暁)

2018年6月3日 無断転載禁止