アキのKEIルポ “復帰過程”広がる可能性 トップとの対戦まだ不足

 3回戦のG・シモン戦は、ほぼ完璧な内容だった。回転の少ない相手のボールを跳ね際で捉え、打つごとにキリキリとネジを巻き上げるようにリズムを速めては、スピードで相手を凌(りょう)駕(が)する。「ラリーのリズムがつかめた」と、本人も大いに自信を深めた一戦だった。

 皮肉にもその「リズム」が、D・ティエム戦で錦織を苦しめただろうか。ティエム戦の錦織は、立ち上がりから「足が動かなかった」と言い、理由は「自分でも分からない」と言った。

 ただ振り返れば、今季のクレーシーズンでの錦織は、重いスピンを打つ典型的なクレーのスペシャリストとはR・ナダルくらいしか対戦していない。そのような経験の少なさが、試合序盤で錦織を戸惑わせたのかもしれない。

 錦織本人は、全仏前に出場したローマ・マスターズの時点で「もう復帰過程とは言えない」と、完全復帰宣言とも言える言葉を発した。ただ、5セットマッチのグランドスラムで、種々のプレースタイルを持つトッププレーヤーとしのぎを削るのは、今回が実に10カ月ぶり。それを思えば、やはりまだ“復帰過程”の最中に彼は居ると言えるだろう。

 そしてそれは、この先に大いなる可能性が広がっていることを示してもいる。

(フリーライター・内田暁)

 =おわり=

2018年6月5日 無断転載禁止