出雲から願う拉致解決

 出雲地方とつながりがある地の一つに新潟県佐渡がある。本土側の渡航地だったのが出雲崎。現地の神話によると、地名の由来は「船で海を渡る出雲大神を魚や亀が佐(たす)けたので佐渡、帰ってきた大神が鎮座したので出雲」と伝わる▼出雲市出身の社会学者・岡本雅享氏の本紙連載「出雲を原郷とする人たち」に詳しい。興味深いのが島根半島-隠岐、出雲崎-佐渡の相似性。直線距離はともに50キロ。目視で陸地との距離を保って対馬海流に乗れば航海しやすく、近世には佐渡金山の開発に伴い石見人も含め盛んに往来した▼北朝鮮船は夜陰にまぎれて航行したのだろうか。政府認定の拉致被害者17人のうち、米子市の松本京子さんや横田めぐみさんたち9人の拉致が約40年前に日本海側で集中して発生した▼非核化を主要テーマに、米朝首脳がきょう初会談に臨む。事前協議で言及のなかった拉致問題の棚上げを避けたい日本は、直前の首脳会談で米国に念押ししたものの、同盟国頼みの構図に変わりはない▼動きの鈍かった日本に不安を覚えたのが、佐渡で拉致被害に遭った曽我ひとみさん。6月初めの新潟での講演では日朝首脳会談の開催を求めた。北朝鮮が外交舞台に出てきた今こそ千載一遇の好機に映るのだろう▼曽我さんとともに連れ去られた母ミヨシさんは音信不通のまま今年で齢(よわい)87歳。同世代の被害者家族も多い。「時間との闘い」と曽我さん。膠着(こうちゃく)状態から局面打開との願いは佐渡にはもちろん、縁ある出雲にも脈打っている。(泰)

2018年6月12日 無断転載禁止