古代ハスで暑気払い

 池一面に広がる濃緑の葉の間からピンク色のつぼみがすっと頭を出し、夏の訪れを告げている。出雲市斐川町神庭の荒神谷史跡公園で、今年も古代ハスの開花が始まった。約5千株、5万本は西日本最大とされる。見頃を迎えるのは6月下旬▼古代ハスは約3千年の長い眠りから覚めた「奇跡の花」だ。戦後まもなく、植物学者の大賀一郎博士が千葉県内の遺跡の地層で種子3粒を見つけ、このうち1粒の発芽に成功したことから正式名称は大賀ハス▼博士の下で献身的に働いた女性の出身地の大田市に根分けされたものを、旧斐川町が30年前に15株ほど譲り受けて育てた。さまざまな人の縁あって、古代花の群生地にふさわしい弥生文化の拠点にたたずむ▼ハスは汚れた環境下にあっても、清く正しく生きる意味の「泥中の蓮(はす)」のことわざにあるように、泥水の中できれいに花を咲かす。古来から人々が引かれるのは、その優雅な姿とともに、周囲に染まらない強さのようなもの感じるからだろう▼ハスには多くの効能がある。絶世の美女・楊貴妃が飲んでいたというハスの葉茶には、抗酸化や脂肪を分解する作用があるとされる。荒神谷産の葉茶は、今季こそアブラムシの大量発生で農薬を使用したため製造を見送ったものの、純国産の希少性から、島根の隠れた人気商品になっている▼暑気払いには花に注いだ飲み物を、茎をストロー代わりにして飲む「象鼻盃(ぞうびはい)」がうってつけ。濁りに染まらぬハスの清らかさを直接に、味わってみるのも一興だ。(衣)

2018年6月14日 無断転載禁止