レッツ連歌(下房桃菴)・6月14日付

(挿絵・麦倉うさぎ)
 まずは、前回お出ししたクイズの答え―。

 「周りからまだお若いとおだてられ」に付けた、

  桁まちがえたバッグ買うハメ

と「シカが出るイノシシが出るサルが出る」に付けた、

  そんなハズないチョウ握りしめ

の二句に共通する表現上の特徴は?

 最初の句は、ごく普通に表現すれば、「桁まちがえたために高いバッグを…」となるはずです。二つ目の句は、前句を花札の話題に転じたのですが、これも普通に表現すれば、「そんなハズないと不思議がりつつチョウを…」とでもなるでしょう。

 どちらも、ていねいに説明しようとすると、どうしても長くなります。それを章二さんは、「連体修飾語+体言(名詞)」という簡潔な形で表現されました。日本語のこの用法には、融通無碍(むげ)な機能があるのです。

 もっとも、その分、やや分かりにくい表現になりがち。ここでみなさんの読解力が試されます。

           ◇

 心にもないことを言うこともあり

時にはそれで丸く治まる    (江津)岡本美津子

お利口そうな坊ちゃんだこと  (雲南)渡部 静子

似合うかしらと笑顔向けられ  (出雲)野村たまえ

これが大人になった証拠か   (松江)加茂 京子

うなだれている息子思春期 (隠岐の島)大田 有子

尻こそばゆいお見合いの席   (浜田)滝本 洋子

記憶のかぎり会っていません  (出雲)吾郷 寿海

酒のほかには楽しみがない   (松江)岩田 正之

ほどよい距離の嫁と姑     (出雲)原  陽子

お前は橋の下にいたのサ    (松江)田中 堂太

いろいろあった部下の結婚   (出雲)放ヒサユキ

セールスマンは性に合わない  (川本)高砂瀬喜美

隠居の羽織順番に着て     (松江)高木 酔子

一晩寝ればどうせ忘れる    (出雲)栗田  枝

寂しくなると送別の席     (江津)花田 美昭

翔ちゃんなんかキライあそばん(奥出雲)松田多美子

好きだからこそ泣かすミヨちゃん(松江)三島 啓克

責任取って離婚しました    (美郷)芦矢 敦子

ママ大キライと泣いて抱きつく (松江)花井 寛子

大臣たちの謝罪会見      (松江)持田 高行

首まで浸かって呻く爺さん (隠岐の島)松岡  廣

易者は客の思い見透かし    (益田)石川アキオ

やんちゃ坊主の親とバッタリ  (益田)山藤 律子

期待すりゃこそ打つ愛のムチ  (飯南)塩田美代子

上目づかいに揉み手する癖   (益田)石田 三章

あなたに似合う花柄の服    (雲南)石田千惠子

いらない服がまた一つ増え   (浜田)山崎 重子

雪しんしんと降る南部坂    (松江)安東 和実

           ◇

 酒はほんとは2番目なのですね。分かります、正之さん。

 多美子さんの「翔ちゃん」と、啓克さんの「ミヨちゃん」―、作り話だから、どんな名前でもいいようなものの、この二つ、不思議とリアリティーが感じられます。「太郎」と「花子」じゃ、役所の窓口の「記載例」みたいだし、かといってキラキラネームじゃ目立ちすぎ。細かいところにまで神経の行き届いたベテランお二人の名句、あえて前後に並べてみました。

 敦子さんの句は、「結婚」とあったのを「離婚」に変えさせていただきました。深い意味はありません。それもおもしろいかな、と思ったまでのこと。

 最後に、今回の前句―、声に出して読んでみると、ちょっとおもしろいリズムが生まれます。これは皆さん、褒めてあげてください!

           ◇

 次は、

  真夏に降ってほしい大雪

 このバカバカしい前句に、すばらしい長句(五七 五)をお願いいたします。

(島根大名誉教授)

2018年6月14日 無断転載禁止

こども新聞