ビールと米子商人

 米子商人の「DNA」はまだ健在だった。往時の勢いが失われた中心市街地でカフェ、衣料店などを展開する男性が7月にも地域にこだわったビールの醸造所を開く▼落合拡朗さん、41歳。商店街から少し離れた3階建てのビルを改装し、原料に大山の湧き水を使った地産のビールを生産。地域を代表する果実の二十世紀ナシを素材に使うアイデアもあり、商都のにぎわい復活につなげる▼資金集めはネットによるクラウドファンディングで、当面の目標の300万円を達成した。ホームページには数々の励ましの声が寄せられており、新しいものに目がない米子人気質も垣間見える▼米子のアーケードは大半がシャッター街化しているのに、落合さんが店舗を構える一帯だけは衰えを知らない。秘訣(ひけつ)を関係者は「行政に頼らないこと」。かつての米子の繁栄は民間主導でもたらされたことを、今さらながら思い出した▼1990年代に到来した地ビール生産は、高額な醸造用タンクを備えたのが特徴だった。今はさまざまな生産形態で手作りするクラフトビールとしてブームが再燃している。落合さんが手本としたのも、手製の醸造設備で2年前から本格生産している江津市の石見麦酒。歴史より先進性に目を付けるのが米子人らしい▼近くにある市街地の旗艦店・米子高島屋も醸造所との連携には前向きだ。商都再興の切り札と期待されている旧東館再整備は1年以上先だが、まずは地産のビールが前祝いの「乾杯」とばかりに活性化の先陣を切る。(示)

2018年6月24日 無断転載禁止