モネのあこがれ

 「芸術新潮」6月号を手に取ってうれしくなった。印象派を代表するフランスの画家モネが描いた「アヴァルの門」が紹介されている。島根県立美術館が所蔵する県民の大切な宝だ▼北フランスの名勝エトルタ海岸にある作品タイトルになったアーチ状の岩と鋭い針の形をした巨岩との大胆な構図。降り注ぐ陽光や大気のもや、もうろうと溶け合う空と海を、明るい色彩で織りなし描いている▼印象派巨匠の中期の代表作の一つ。モネ関連の展覧会が企画されるとよく県立美術館に貸し出し依頼が舞い込み、現在も名古屋市美術館の展覧会に出品中。これまで国内外で10回以上出品されたのは秀作の証し▼作品に登場する風景は別の逸話も持つ。針状の巨岩こそ、フランスの作家ルブランが書いた怪盗紳士ルパンシリーズで有名な冒険推理小説「奇岩城」の舞台。歴代フランス国王の巨万の財宝が隠されたありかを巡る物語で、名画と小説の舞台が重なり合う▼この春モネと島根をつなぐ新たな縁が結ばれたのも、うれしいニュース。晩年を過ごした同国のジヴェルニー庭園に、松江市八束町の由志園が贈ったボタンが植えられた。モネが日本から取り寄せた苗木で造成し画題にしたボタン園が日仏国交樹立160周年を記念して再現された▼ジヴェルニーは水の庭が造られ「睡蓮(すいれん)」の連作が生まれた場として知られる。邸宅を愛した浮世絵で飾り、庭に太鼓橋を架けた。日本に深い憧れを抱いていた泉下のモネを、大根島ボタンが魅了したと思いたい。(道)

2018年6月27日 無断転載禁止