外国人の就労/理念なき拡大でいいか

 政府は深刻な人手不足に対応して外国人労働者の就労を拡大するため、新たな在留資格を設けることを決め「骨太方針」に盛り込んだ。原則として認めてこなかった外国人の単純労働者の受け入れに事実上、道を開く政策転換だが、明確な理念が見えないと言わざるを得ない。

 新たな在留資格は農業、建設、造船、宿泊、介護の5分野を想定しており、外国人が技能試験と日本語能力試験で一定水準に達すれば最長5年間働けるが、家族の帯同は基本的に認めない。技能実習の経験者は試験が免除される。

 政府は新資格を盛り込んだ入管難民法改正案を秋の臨時国会にも提出する方針で、2025年ごろまでに50万人超の受け入れを見込んでいる。

 政府はこれまで専門知識のある人材に限って外国人労働者を受け入れる方針を掲げてきたが、実際は外国人労働者128万人の4割を留学生のアルバイトや技能実習生が占め、その多くが低賃金の単純労働に従事している。新たな在留資格の創設は、この有名無実の方針を改め、単純労働分野の門戸を開く方向にかじを切った形だ。

 しかし、この政策には多くの疑念が浮かぶ。まず現行の技能実習制度が手付かずなのが問題だ。技能実習生の雇用は、違法な給与不払いや長時間労働が横行するなど労働者の基本的な権利が守られていない例が多く、社会問題となっている。この状況を改善しないままで新資格を導入すれば、同様の外国人労働者が増えるだけかもしれない。

 また、政府は「移民政策とは異なる」と強調するが、移民政策との明確な線引きが可能とは思えない。外国人が技能実習生として最長5年間働いて新資格に切り替えれば、計10年間働ける。実質的な移民とみることもでき、日本社会を大きく変容させる可能性すらある。政府の説明は甘過ぎないだろうか。

 そもそも外国人の就労拡大のきっかけは、人手不足に悩まされている業界の要請だが、人材を確保するには、賃上げなど雇用条件の改善と、十分に活用されていない女性や高齢者、障害者が働きやすい環境の整備が先決だ。すぐ外国人労働者に頼ろうとするのは安易ではないか。企業には改めて雇用条件の改善などの努力を求めたい。

 新資格の対象業種は骨太方針に明確な規定がなく、適用対象が製造業などにも拡大されることが容易に予想できる。外国人労働者に長期間、家族と離れた生活を強いることは人道上問題であり、家族の帯同もいずれ認められるかもしれない。外国人労働者の受け入れは、家族も含めて想像以上の速さで拡大する公算が大きいと考えるべきだ。

 しかし、先行きがどうなろうと、既に多数の外国人労働者を受け入れている以上、その権利の保護と生活の支援が急務である。政府はまず技能実習制度を根本的に見直し、劣悪な雇用環境を一掃するよう努めてほしい。仲介業者による中間搾取を防ぐ仕組みの整備、日本語学習や医療面の支援なども必要だ。

 同時に、日本社会が移民を含めて外国人労働者をどう受け入れ、どう共生していくかという中長期的な理念の構築が不可欠だ。政府はもちろん、国民一人一人が考えていかなければならない。

2018年6月27日 無断転載禁止