「年金詐欺」に要注意

 それはまるで特殊詐欺を疑わすかのような電話だった。年金事務所職員を名乗り、夫を亡くしたばかりの松江市の女性に「ご主人の年金に過払いがあった。時効が成立していない60万円の返済を」。女性宅を訪れることもなく数日後、経緯と返し方を記した文書を郵送した▼過払いは事実で、職員も実在した。年金事務所によると同様の事例は珍しくなく、いちいち面会してわびないらしい。各機関が金銭絡みの不審電話に注意するよう呼び掛ける昨今。詐欺まがいと受け取られてもおかしくない対応ぶりに、遺族の憤りは極まった▼16日付本紙で報じた今回の過払いは、複数の年金にまたがった加入期間を一元的に把握する仕組みがなかったのが原因。女性の夫の死亡届を受けて調べたところ発覚した▼「消えた年金記録」問題が発覚した2007年から、国が再発防止策を打っても事務処理ミスは繰り返されている。日本年金機構の発足から7年間で、過払いは全国で3千件、返済を求めた総額は26億円を超え、未払いも8千件、121億円に上る▼高齢化が一段と進んで、年金を含む社会保障給付費は40年度に現在の1.5倍超の190兆円に膨らむ。税・保険料の引き上げが議論されるだろうが、このままでは「穴の開いたバケツ」に水を注ぐようなもの▼老後を支える年金制度の心もとなさと、ミスした側が電話と書類で処理しようとした姿勢によって二重のダメージを受けた女性は「こんなつらい思いはしたくない」と消沈しているという。(杉)

2018年6月29日 無断転載禁止