W杯ベスト16/新たな歴史を見たい

 サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会で、日本がベスト16に進んだ。

 日本は今、国際サッカー連盟(FIFA)ランクが61位まで下がっている。1次リーグ突破は世界的には番狂わせと受け止められるだろう。

 4月にハリルホジッチ前監督を引き継いだ西野朗監督は1次リーグで南米、アフリカ、欧州の強豪に対し、尻込みすることなく、パスをつないで攻め上がるサッカーを進めた。

 開幕からここまで日本中が注目し、勝利に、引き分けに、そして1次リーグ突破に沸いた。若者が繁華街のパブリックビューイング(PV)に繰り出すだけでなく、選手の出身地では、多くの市民がPVで深夜から未明まで観戦し、歓声を上げた。

 これほどまでに見る者を夢中にさせ、一体感を呼び起こすスポーツ大会は、やはりW杯のほかにない。

 ベスト16に進んだ国を大陸別に見ると、欧州10、南米4、アジアと北中米カリブ海が各1となった。欧州勢は、前回大会優勝のドイツが敗退したにもかかわらず、充実ぶりを示している。

 欧州の予選では、伝統国のイタリアとオランダが敗退した一方、人口約33万人の小国アイスランドが本大会初出場を果たすなど、伝統国と新興勢力の格差が縮まってきた。アイスランドは今大会、アルゼンチンと引き分け、力があることを証明した。

 また、ベルギーやフランスはアフリカ系のスピードのある選手が相手の守備選手を振り切ってゴールを脅かす力強いサッカーを展開している。

 世界のサッカーエネルギーの源泉は今、欧州のクラブチームにある。そこは世界中から優秀な選手が集まり、国際性と多様性に富んでいる。国内リーグだけでなく、大陸内の大会でしのぎを削ることで、選手とクラブはレベルを上げる。

 今回のW杯に出場した欧州の各国は地理的な恩恵を受け、そうしたクラブが持つ発展の熱を吸収している。アイスランドも選手が自国を離れ欧州各地のクラブに所属するようになって徐々に代表チームとして力を付けてきた。

 南米、アフリカ、北中米カリブ海、そして日本からも欧州のクラブに所属し、活躍する選手は後を絶たない。今大会、日本も大半がいわゆる「欧州組」だ。

 欧州での活躍を夢見てJリーグから移籍した各選手は、確実に力を伸ばしている。守備で中心的な役割を果たしている長谷部誠選手はドイツで、吉田麻也選手はイングランドで視野の広さを身に付けた。日本がさらに力を伸ばしていくには、この流れを止めてはいけないのだろう。

 Jリーグの監督として歴代最多の270勝を誇る西野氏は、自身のJリーグでの経験を生かし、各選手の特長を上手に引き出している。

 前監督が追求した「堅守速攻」から抜け出し、サイドに振ってからの攻めや、中盤でのパス交換による突破を織り交ぜ、より選択肢の多いサッカーになった。選手がなじんでいるからだろう、チームに迷いがない。

 ベスト8を懸けた戦いの相手はベルギーだ。日本はまだ一度も8強入りしたことがない。新しい歴史の誕生をぜひ見届けたい。

2018年6月30日 無断転載禁止