したたかW杯日本

 精根尽き果てるまでという美学に立てば、決して褒められる戦いではないのかもしれない。終盤のパス回しで自ら敗戦を導いた戦術を海外メディアは「茶番」と評した。前戦から先発イレブンを6人も代えた采配に首をひねったファンも少なくないはず。それでもサッカーのロシアW杯で日本は決勝トーナメントに駒を進めた▼薄氷を踏むような思いの一方で、西野朗監督は、1次リーグ突破だけではなく、その先のことをクールに見据えていたはず。暑さや疲労の蓄積を考慮。相手に勝利を贈るのと引き換えに10分短い実質80分の戦いに持ち込み、好調な選手は温存した▼指揮官の意向を踏まえて終盤に交代出場した長谷部誠主将が試合後に語った。「この世界は結果。結果が一番」。世界最高峰の舞台は、したたかさがなければ生き残れないことを、日本は出場6回目で身に付けたとばかりに▼世界のサッカーは欧州勢と南米勢の競い合いという歴史を刻んできた。今回のW杯で出そろった16強の顔触れを見ても、欧州が自国開催で出場のロシアを含めて10チームで、南米は4チーム▼残る2チームのうち北中米のメキシコは南米勢が集う大陸選手権、コパ・アメリカの事実上のレギュラー国になっていることを踏まえれば、二大勢力以外に一発勝負の舞台に立つのは日本だけ▼ここからの試合は余力をいかに残しているかが鍵になることを欧州や南米の常連国は知っている。戦いの過程でその経験値を積んできた日本はひるむことなくピッチに立つ。(泰)

2018年6月30日 無断転載禁止