女性宮家/慶事の陰で危機は進む

 高円宮家の三女絢子さまと日本郵船社員の婚約内定が正式に発表された。結婚式は10月に催される。皇族の結婚は2014年の高円宮家の次女典子さん以来となる。秋篠宮家の長女眞子さまの婚約も内定。「十分な準備」などを理由に結婚は20年まで延期されたが、その時が来れば、天皇陛下と皇族で構成する皇室は19人から17人になる。

 女性皇族は結婚すれば皇室を離れると皇室典範は定めており、慶事の陰で危機は進む。絢子さまと眞子さまのほかに未婚の女性皇族は30代の3人を含め5人。結婚が相次ぐと、公務の分担は難しくなる。さらに来年の新天皇即位後は、皇位継承資格者が一人減る。秋篠宮さまよりも若い世代は同宮家の長男悠仁さまだけだ。

 手をこまねいていては皇室は細り、安定的な皇位継承まで揺らぐ。しかし政府は天皇の代替わりを円滑に進めることを最優先し、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」の創設などの検討に動こうとしない。女性・女系天皇につながる可能性のある女性宮家に安倍政権の支持基盤である保守層が強く反発しているからだ。

 天皇陛下の退位特例法の付帯決議は、女性宮家などの皇族減少対策について退位後速やかに政府が検討し国会に報告するよう求めている。絢子さま婚約内定でさらに深まった皇室の危機を直視し、議論に取り掛かるべきだ。

 小泉政権の下で05年、有識者会議が女性・女系天皇の容認と女性宮家創設を提言。野田政権も12年に女性宮家の検討を打ち出したが、安倍晋三首相は「男系継承が古来例外なく維持されてきたことの重み」を強調しながら、議論への深入りを避けてきた。国論を二分する論争になりかねず、次世代に先送りしたいという思惑も見て取れる。

 新天皇に剣と勾玉(まがたま)が引き継がれる「剣璽(けんじ)等承継の儀」を巡っても、政府は「前例踏襲」を理由に女性皇族の参列を認めない方針を決めた。「時代に合わない」との声も出たが、皇位継承権のない女性皇族の参列を認めれば、女性宮家創設や女性・女系天皇の議論に飛び火しかねないと警戒したとみられている。

 だが、いつまでも及び腰ではいられないだろう。女性宮家については、眞子さまの婚約相手側の金銭トラブルが週刊誌報道などで取り上げられ結婚延期の一因となり、民間から結婚相手を迎えることの難しさが浮き彫りになった。

 その点をどう克服するか。首相は国会で、戦後に皇籍を離れた11宮家の子孫を再び皇室に迎え入れるのも選択肢という認識を示したことがあるが、女性宮家の場合と同じ難しさがつきまとう。さらに70年もの間、民間人として過ごしてきた旧宮家の人たちが皇室への復帰を望むか、国民に皇族として受け入れてもらえるかも定かではない。

 もう一つ、結婚により皇室を離れた女性の元皇族に公務を委嘱するとの案がある。ただ公務の担い手を確保することはできても、安定的な皇位継承にはつながらない。

 女性宮家について、夫や子に皇族の身分を与えるかどうかなどの論点もある。いずれの選択肢にせよ、議論は紆余(うよ)曲折が予想される。先延ばしにし、事態を深刻なものにすることは避けるべきだ。

2018年7月3日 無断転載禁止