W杯日本健闘/次世代を勇気づけた

 これほどまでに日本中が盛り上がったのは、いつ以来だろう。サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会で日本が健闘した。決勝トーナメントに勝ち進み、初のベスト8入りはならなかったが、強豪ベルギーに対し一時は2-0とリードした。

 テレビの平均視聴率(いずれも関東地区)は、コロンビア戦の後半が48.7%を記録し、午前0時開始のセネガル戦は試合を通じて30.9%、午後11時からのポーランド戦は44.2%だった。

 日本が新しい歴史をつくるか注目されたベルギー戦は、午前3時開始だったにもかかわらず30.8%に達した。この2週間、多くの国民が深夜から未明にかけてテレビの前で声援を送った。

 五輪でも、ここまで強い選手との一体感は生まれないだろう。第1戦は同点に追い付かれた後に相手を突き放す決勝ゴールを決めた。第2戦は2度先行されながら、いずれも追い付いて引き分けに持ち込んだ。スリリングな展開と、追い詰められても苦境を突破する選手の頑張りに多くの国民が魅了された。

 日本戦に限らず、各地のスタジアムで映し出されるサポーターの表情からは大きな喜びや失意が伝わってきた。国の政治情勢が不安定でも、経済状況が芳しくなくても、人々はW杯に夢中になる。

 サッカーというスポーツは、人々の心をつかんで放さない魅力がある。そしてW杯は、国の誇りと期待が前面にあふれ出る特別なイベントだと改めて感じる。

 世界各国のメディアが日本の健闘をたたえた。国際サッカー連盟(FIFA)ランク61位のチームがここまで活躍できた背景には何があるのだろう。

 4月に急きょ、ハリルホジッチ前監督を引き継いだ西野朗監督が選手に送り続けたメッセージは明快だった。それは強敵にひるむことなく戦おう、多少のリスクがあっても積極的に攻めようというものだった。

 実力で劣るチームは、まず守備を固めて失点を防ぎ、少ない好機を生かして辛勝するのが賢明な試合運びとされる。その点、西野監督の指示は冒険的と映らないでもなかった。しかし、選手は指揮官の目指す方向に喜んで進んだ。正確なパスを交換して攻め上がり、シュートは相手ゴールの枠内をとらえた。世界は、日本のプレーの質の高さを評価した。

平昌(ピョンチャン)冬季五輪後、日本のスポーツ界は自らの価値をおとしめる問題に直面した。

 レスリング五輪4連覇の伊調馨選手が日本レスリング協会の強化本部長だった元指導者からパワーハラスメントによって、精神的苦痛を受け続けていたことが明らかになった。また、日本大学アメリカンフットボール部の前監督が定期戦で相手チームの中心選手を負傷させるよう部員の選手に指示したことも明らかになった。

 陰湿で暗い、負のイメージが広がっていただけに、この日本代表の健闘は明るく、楽しさにあふれたスポーツ本来の価値を呼び起こすことになった。

 サッカー少年は大迫勇也選手、乾貴士選手、柴崎岳選手らの活躍に目を輝かせ、胸躍らせたに違いない。次世代を勇気づける活躍だった。

2018年7月4日 無断転載禁止