アキのKEIルポ 友人との対戦 胸中複雑 他人の痛みに敏感な錦織

 「もし選べるなら、友人との対戦は避けたかった」と打ち明けた胸中は、試合後の少し哀愁をたたえた表情に映し出されていただろう。ここで言う「友人」とは、同じアカデミーを拠点とするクリスチャン・ハリソン。幼少期から幾度も練習を重ねてきた後輩が、2018年ウィンブルドン開幕戦の対戦相手だった。

 クリスチャンは、兄のライアンと共にコーチである父の手ほどきを受けてきた、いわばテニス界のエリート筋。しかしけがに幾度も行く手を阻まれた苦労人でもある。自身もけがで苦しめられた錦織は、他人の痛みに対しても敏感だ。

 例えば昨年の全仏OP初戦で対戦したタナシ・コッキナキスに対してもそうだった。肩のけがなどのため2年近く戦線離脱を強いられた若者に対しても、錦織は「かわいそうですね。特に才能のある選手がけがする姿を見るのは」と自分を重ねるような言葉を口にした。その相手を破ったことが、ある種の責任感を彼に与えただろうか。この全仏での錦織は幾度も窮地を切り抜けて、結果的にベスト8まで勝ち上がった。

 今回のウィンブルドンでも彼は、破ったクリスチャンに対し「本戦で戦う姿を見られてうれしかった」とエールを送っている。そんな弟分の思いも背負い、聖地では未踏のベスト8以上を目指す。

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 錦織取材を続けるフリーライターの内田暁さんが、ウィンブルドンから報告する。

2018年7月5日 無断転載禁止