一村一品運動から39年

 書棚を整理していたら懐かしい本が出てきた。2年前に亡くなった元大分県知事、平松守彦さんの著書『地方からの発想』。昔、大分県庁に訪ねて取材した後、その場でサインして手渡され、さすがにPR上手と感心した▼当時は、地域づくりのお手本とされた「一村一品運動」が12年を過ぎた頃。その象徴的品目の一つ麦焼酎の話は今も覚えている。大分の麦焼酎の発売は、この運動とほぼ同時期。それまで全国1%のシェアだった焼酎の出荷量が、十数年で約100倍になり、鹿児島、宮崎を抜いてトップに躍り出ていた▼きっかけを仕掛けたのは平松さん。上京するたびに麦焼酎と特産のカボスを持参。料亭など一流店での会合では、自らお湯割りを作って参加者たちに勧めた。その結果、「翌日に残らない」などと口コミで広がり、ブームにつながったという▼平松さんが考えたもう一つの作戦は品切れ状態にすること。人間は手に入りにくいほど欲しくなる。ハングリーマーケティングと呼ばれる手法で、今も使われる。当時1本数万円のプレミアムも付いたらしい▼平松さんが脱却を目指した過疎は今は人口減少に、農産物を加工した「1.5次産業」は6次産業化に読み替えられる。39年前に始まった一村一品運動の先頭に24年間立った平松さん。一時回復した同県の人口は再び減少に転じている▼地方創生はまだ始まって4年目。「継続は力である」「地域づくりにゴールはない」。平松さんの言葉だ。それくらいの覚悟がいる。(己)

2018年7月6日 無断転載禁止