アキのKEIルポ 浮かび上がる奇特さ

 かつては神童と呼ばれながら、才能を開花しきれず低空飛行を続ける…。そんな選手がテニス界には少なくない。トミックもその例として真っ先に名前が挙がる類の選手だ。

 もちろん早熟の天才はどの競技にも居るが、テニスの難しさは世界各地を転戦しながら、年間20前後の大会に出る“継続性”が求められる点にある。日々コートやジムに向かうモチベーションがなければ、トップに居続けるのは不可能なのがテニスのツアーシステムだ。

 7年前にベスト8に躍進した思い出のウィンブルドンで、昨年トミックは「テニスに飽きた。やる気もうせた」と放言し、協会やスポンサーの支援も失った。それでも「最近やっとちゃんとやり出して強くなってきた」というのが、錦織のトミック評である。

 前置きが長くなったが、コート外の挙動同様にプレーも難解で予測不能な相手を、錦織は苦しみながらも正統派なテニスで振り切った。初戦で不調だったサーブを修正し、毎日の練習に依拠する心身のスタミナを発揮し、少ない勝機をつかみ取る。

 試合後、テニスに飽きを感じたことはないかと問われた勝者は「今のところ一回もないですね」と語気を強めて即答する。かつての神童のやや道を外れた姿は、錦織が踏破した道こそが、本来はいかに奇特かを浮かび上がらせてもいた。

 (フリーライター・内田暁)

2018年7月7日 無断転載禁止