朝鮮半島の非核化と平和協定/核軍拡競争打開が不可欠

島根大名誉教授 牧田 幸人

 ここでは、とても難解で、どう考えたらよいか戸惑いながらも、一つのテーマとして「朝鮮半島の非核化と平和協定」を取り上げ、少しばかり思考してみたい。

 昨今、近未来に向けた朝鮮半島における平和秩序体制の構築に深く関わる、朝鮮半島の非核化や休戦協定から平和協定への転換など、もしそれが実現すれば、戦後世界の展開過程を顧みても極めて重要な歴史的意義を有する国際問題について関係諸国で論議され、実現に向けた動きが積極的に展開されている。

 こうした問題の実際上の処理に際して多くの場合、国際政治の機微や権謀術数、高度な政治的・軍事的戦略の観点から利害得失を重視して処理されがちである。だが、それでよいのか。近未来の平和秩序体制の確立や構築のためにはどうすればよいか。思案のしどころだ。

 それこそ「政治」のなすべきこととして期待されることではないのか。

 ところで非核化と平和協定の問題について、その歴史的背景や根源的要因を含めて、どう思考し、考察すべきか。これはとても難解であるが、少なくとも戦後世界の歴史展開に留意し、アプローチすることが有益だろう。

 第2次大戦後、国際社会の一般平和機構として国連が創設され、安全保障の分野では安保理を中心とした集団安全保障体制が制度化された。これは第1次大戦後の国際連盟の挫折を反省し、教訓としたものであった。

 だが、冷戦体制下での東西対立に起因する安保理の機能不全、集団安全保障の危機的状況などの中で、朝鮮戦争(1950~53年)が勃発し、休戦協定締結のまま戦争終結はならず、今日に至る。それは結果として朝鮮半島における分断国家としての南北朝鮮の成立・存在をもたらした。

 次に、非核化に関わる歴史的背景や問題状況に関連して留意すべきは、戦後世界における核軍縮や核兵器廃絶に向けた道程と厳しい現実についてである。第2次大戦末期の米軍による広島・長崎への原爆投下は、言語に絶する未曽有の悲惨な結果をもたらした。

 以後、この非人道的で無差別大量破壊兵器たる核兵器の開発・製造・使用などをいかに禁止するか、これが戦後世界の重要な政策上の実現課題であり続けた。

 さて、非核化と平和協定をどう具体化し実現するか、そのためにはどうしたらよいか。19世紀から20世紀、そして21世紀の今日においても、国際関係における伝統的な勢力均衡方式が維持され、これが核軍拡競争を招来し、核抑止政策の理論的基礎とされている。

 これをいかに打開し克服するかは、「核なき世界」の実現や核兵器禁止条約(2017年)の実効性確保のためにも不可欠である。だが、現実には核保有国と非核保有国との溝は深く対立的である。また、休戦協定から平和協定への転換も、ベトナムやドイツと同様に、冷戦後世界の残された課題として世界史的観点から確実に実現されなければならない、と考える。

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 まきた・ゆきと 1942年生まれ。国際法学者。京都大法学博士。京都大大学院を修了し、鹿児島大、島根大大学院で国際法を担当。倉吉市在住。

2018年7月9日 無断転載禁止