生死を分ける豪雨

 災害現場では、行動や居場所のほんの少しの違いが家族の生死を分ける。平成に入ってから最悪の被害となった西日本豪雨。多くの犠牲者や安否不明者が出ている広島県や愛媛県などの被災地から届いてくる声を拾い集めると、胸が痛む▼川や裏山の様子を見るため外に出た直後に、土砂に襲われ真っ二つになった自宅。母屋に居て大きな音で異変に気付くと、既に土砂に押し流されていた隣接する離れ。寝食を共にしてきた家族の姿が瞬時に消えた。平穏な日常が壊された▼突然の災禍で命を奪われてしまった人と、これからつらい記憶とともに生きていかなければならない家族。犠牲者と残された遺族。双方の無念さに思いを至らせるのは、この夏だけではない▼島根県内だけで死者・不明者107人の甚大な被害となった昭和58(1983)年豪雨。発生から20年の節目だった15年前の夏、被災体験者たちを同僚と訪ねて回った。その際に聞いた一人の男性の証言が今も脳裏に刻まれている▼自宅より安全だろうと妻を避難させた先で崖崩れが発生。良かれと思った判断と行動が暗転し、伴侶は亡くなった。交錯する申し訳なさと悔しさ。その日のことをずっと引きずって20年を生きてきたという▼「街から水害の爪痕は消えても、心の爪痕は消えない」。事情を知る男性の知人が継いだ言葉も、また響いた。今回の被災で肉親を失った人の悲しみはいかばかりか。絆を目の前で絶つ災害の残酷さ。雨は上がったのに、心は一向に晴れない。(泰)

2018年7月11日 無断転載禁止