アキのKEIルポ けがが精神力培う

 芝でのテニスは好きではないと、錦織は常に口にしていた。一つには、サーブの優位性が高過ぎる。ポイントが早く決まるので、一つのミスを機に流れが変わることもある。そんなテニスは彼にとり、誤解を恐れず言うなら、つまらないものなのだろう。

 その彼がついにウィンブルドンでベスト8に到達した。キーワードは「我慢」と「集中力」。4回戦のガルビス戦では、サーブ攻略の糸口が全く見えないまま第1セットを落とすも、第2セットはひたすら耐え、微かな光が差す瞬間を待った。この試合を見ていたジョコビッチは、錦織の勝因を「類いまれなる精神力」だと明言した。

 今の錦織が示す心の強さとは、手首のけがによる約半年の戦線離脱を源泉とする。

 けがから復帰した直後は、理想との乖離(かいり)にいら立つこともあった。しかしだからこそ彼は、自分の心の動きに客観的に向き合えるようになる。精神面のアップダウンが、集中力の継続を阻害することも自覚する。だからこそ復帰後は、以前よりも落ち着いてプレーすることを肝に銘じるようになったという。

 けがが彼を強くしたなどと安易に言いたくはないが、その側面は確かにある。苦しみを乗り越え手にした強さだからこそ、過去最も苦しんできた大会で効力を発揮している。

 (フリーライター・内田暁)

2018年7月11日 無断転載禁止