高学歴のジレンマ

 松江市出身の社会学者、吉川徹大阪大大学院教授は学歴に関する研究に精力的に取り組んでいる。その吉川教授が島根大学で開かれたシンポジウムで「島根県の人口減を食い止めるために大学進学率も考えるべきだ」と訴えた▼島根県の大学進学率は47%。多くは県外の大学に入っても卒業後帰ってこない。大学に進むかどうかは個人の選択だが、進学率が上昇するほど県外に人的資源を奪われ、県全体にとっては損失となって跳ね返る側面も無視できないという▼教育を損得勘定で測るのは気が引ける。しかし教育にオカネがかかるのは事実であり人的能力への投資と見ることもできる。定住の視点から大学進学の費用対効果を考えると島根県の特徴がより鮮明になってくる▼若者の勉学意欲のリターンが還流せず都市部に流出して島根県が圧倒的な費用超過県になっているのは、県内に若者が魅力を感じる職場が少ないためだ▼そこで吉川氏が提案するのが、県庁や県内有力企業にUターン向けの中途採用枠を設ける仕組み作り。それも幹部層として受け入れる。中央官庁や大企業の中堅層には新卒時には大都市に憧れても、ある年齢になって古里が恋しくなる人も少なくない▼そうした人たちの里心を誘導する職場の確保。古里に錦を飾る前に古里で錦を飾るチャンスを与える。高校までの優等生に久しぶりに同じ職場で顔を合わせるかもしれない。その奇遇が地元企業に活力を与え、県版学歴収支の累積赤字を少しでも減らすため、来れ旧友。 (前)

2018年7月13日 無断転載禁止