劉暁波氏死去1年/中国の民主化を促せ

 中国の民主活動家でノーベル平和賞受賞者の劉暁波氏が昨年7月13日に死去して1年。劉氏の妻、劉霞さんは、中国当局による約8年に及んだ軟禁を解かれて出国し、ドイツに到着した。

 中国はドイツのメルケル首相の働き掛けに応じ、国際的なイメージの悪化を避けるため出国を認めたもようだ。しかし、中国国内では露骨な人権弾圧や言論統制が続いており、民主状況は悪化する一方だ。これは看過できない。

 新興大国として国力を強める中国が世界で影響力を拡大する中、中国に民主状況の改善を求める国際社会の声は小さくなりがちだが、決して諦めず、民主化に向けた政治体制改革を促していきたい。

 劉氏は2008年12月、共産党の一党独裁体制の廃止を呼び掛ける「〇八憲章」を発表し、国家政権転覆扇動罪で懲役11年の判決を受けて服役中、肝臓がんのため獄死した。劉氏を9年間近く拘禁し、本人が希望した国外治療を認めなかった中国当局に各国から批判が出たが、大きなうねりにはならなかった。

 メルケル首相は今年5月に訪中した際、李克強首相との会談で、劉霞さんの処遇について協議するなど、中国の人権状況の改善に向けた粘り強い働き掛けを続けた。

 メルケル氏と対照的にトランプ米大統領は中国の人権問題を軽視しているようだ。対中貿易赤字の問題では強硬策を取るが、国連人権理事会からも離脱してしまった。

 かつて米国は先頭に立って各国に人権擁護を呼び掛けてきたが、トランプ氏はその役割を放棄した形だ。だが、米国に比肩する大国を目指す中国が、民主・平和国家か否かは、世界と地域の「平和と安定」を大きく左右する。

 超大国米国は中国に対し、なお強い発言力を有する。トランプ氏は自国の経済的な利益を追求するだけでなく、各国と協調して中国に民主化を要求していくべきだ。

 中国の習近平国家主席は「共産党独裁の堅持」を最も重視し、反スパイ法、国家安全法、インターネット安全法などを次々に施行。3年前、人権派弁護士ら約300人を一斉に連行し、国家政権転覆罪などで処罰した。

 だが、経済的に豊かになれば、民主化に向かうのが自然な流れで、習氏の強権政治は時代に逆行する。

 中国浙江省の裁判所はこのほど、愛知県の男性に対し、スパイ罪などで懲役12年の実刑判決を言い渡した。「公安調査庁のスパイ」と認定されたもようだが、日本政府は関与を否定している。15年以降、この男性を含む日本人8人が相次いでスパイ容疑で拘束、起訴された。中国の政治的な締め付けの強化は日本にとってもひとごとではない。日本政府も中国に対し、積極的に人権尊重を働き掛けていくべきだ。

 10年12月、ノルウェーのノーベル賞委員会は「長年、中国で基本的人権のため、非暴力的手段で闘ってきた」として平和賞を授与したが、獄中の劉氏は授賞式に出席できなかった。

 委員会は出国した劉霞さんに対し、賞状などを受け取るよう呼び掛ける声明を発表した。代理受賞が実現し、中国民主化という劉氏の遺志を国際社会がより強く後押しするよう期待したい。

2018年7月14日 無断転載禁止