エネルギー基本計画/改革の先送りに映る

 政府はエネルギー政策の枠組みとなる「エネルギー基本計画」を4年ぶりに閣議決定した。

 太陽光や風力などの再生可能エネルギーを「主力電源」と位置付けたが、「重要なベースロード電源」という原発の位置付けや、二酸化炭素(CO2)の排出量が多い石炭を活用する方針は前計画と変わらず、2030年度の発電比率も見直さなかった。

 この4年間で変わったエネルギーを取り巻く世界の状況から目をそらし、求められる改革を先送りしたように映る。変化の時代にふさわしいエネルギー政策への転換を目指すべきだろう。

 計画は、冒頭で「再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する」とした。一方で、原子力については「エネルギー需給構造の安定に貢献する」の前に「長期的な」の文言を付け加え、50年ごろまで活用する方針を示唆。20~22%という原発の目標も、22~24%という再生可能エネルギーの目標も変更しなかった。

 この4年間だけでも、再生可能エネルギーの価格は下がり、各国で急速に普及が進んだ。15年には今世紀後半の「脱炭素社会」実現をうたったパリ協定が採択され、この流れに拍車を掛けた。

 一方で、東芝の米国子会社の破綻に象徴されるように世界の原子力は停滞が目立つ。東京電力福島第1原発事故後の安全対策を含め、新設や維持管理のコストが急増していることが大きい。

 日本国内をみても、この間、再稼働した原発はごく一部だ。関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止め訴訟で、名古屋高裁は運転を認める判決を出したが、裁判や仮処分申請で運転停止が命じられる訴訟リスクは依然として残っている。

 長期間、止まっていた原発を稼働させることのリスクを懸念する声や、電力自由化が進む中で、原発関連の費用が電力会社の重荷となっていないか、との指摘もある。

 この間、日本では原発がほとんど動いていなかったにもかかわらず、再生可能エネルギーの拡大や省エネの進展で電力が不足することはなかった。

 「再生可能エネルギーは高く、原発は安い」「電力需要は今後も増える」という電源比率決定時の前提が、既に変わってきていないだろうか。

 現在の発電量に占める原発の比率は2%程度だ。「再稼働を進めた結果、比率が20%を超えても、原発事故前の約30%より低いのだから、依存度の低減にあたる」というのが経済産業省の説明だが、そうした認識で納得できるかどうか。

 逆に「主流化」を目指すとした再生可能エネルギー目標は、世界の平均が既に25%近くになっていることを考えれば消極的に見えてしまう。

 原発や再生可能エネルギーを取り巻く世界と日本の現実を直視しない基本計画は、脱炭素社会づくりに向けてエネルギー需給構造の大改革を進めるというメッセージにはならないだろう。

 世界各国の政府や企業が、再生可能エネルギーと省エネを基本とした脱炭素社会に向けた歩みを速める中、このままでは日本の変革が遅れ、産業の競争力も失うことになりかねない。

2018年7月16日 無断転載禁止