日米原子力協定延長/核燃サイクルは岐路に

 1988年7月に発効した日米原子力協定が30年の「満期」を迎え、自動延長された。これからは一方が通告すれば6カ月後に協定は終了する。これまで明確な期間設定があったが、今後はより不安定になる。日本側には期間更新を求める声もあったが、改定交渉は行われなかった。

 55年に最初の協定が結ばれて以来、米国は日本の原子力政策の後ろ盾となり続け、中曽根康弘首相とレーガン大統領が蜜月関係にあった時代に現協定がまとまった。

 その最大の特徴は、米国の規制権の及ぶ原発使用済み燃料を日本が再処理し、抽出したプルトニウムを利用することを認めた点だ。米国が規制できるのは、米国産の濃縮ウランを使った燃料や、米国の提供した原発から取り出された燃料だ。

 資源小国の日本は半世紀以上にわたり、使用済み燃料からプルトニウムを取り出し、ウランとの混合酸化物(MOX)燃料にして利用する核燃サイクルを国策としてきた。

 そして茨城県東海村に再処理施設を建設し、核燃サイクルの基盤整備を進めた。だが74年、西側の原発資機材を使ってインドがプルトニウムを生成し核実験をすると、米国は商用再処理を国際的に規制する核不拡散政策の強化に乗り出した。

 カーター政権は77年、東海村での再処理事業の再考を求めたが、厳しい交渉を経て辛うじて稼働が認められた。これを「国難」と見た日本は親日的なレーガン政権と交渉、再処理を認めさせた。

 再処理は軍事転用できる技術だ。それを米国が許したのは被爆体験を持つ日本を信頼したからだ。米国の理解の下、再処理を続ける非核保有国は日本以外にない。

 安倍政権は自動延長を選んだが、この特権が日本の市民に高いツケをもたらし、国際的な核秩序と東アジアの安全保障環境を静かに揺さぶっている。日本が核爆弾約6千発に相当する約47トンのプルトニウムを保有するからだ。

 東京電力福島第1原発事故を受け、その使い道は不透明になった。脱原発世論がある中、プルトニウムを大量消費するはずだった高速増殖炉もんじゅ(福井県)は廃炉となり、MOX燃料を使う原発の再稼働もなかなか進まない。

 政府は最近プルトニウム削減への努力を表明したが、青森県六ケ所村の再処理工場が稼働すれば、目標達成は苦しくなる。米専門家の分析によると、MOX燃料はウラン燃料より8倍も高く、米国は既にMOX利用推進を断念しているという。

 また、日本のプルトニウム保有は諸外国との緊張要因になる。中国は、日本たたきの材料とし、自身も商業再処理を計画している。韓国も日本を横目に独自の再処理研究を進めている。さらに国際社会が北朝鮮の完全非核化を追求する中、日本がプルトニウムをため込むのは、北朝鮮に不用意な口実を与えかねない。

 「プルトニウム問題は核不拡散のリーダー国である日本の信頼を損なっている」。最近来日したカントリーマン前米国務次官補はこう警告し、経済的に採算の合わない核燃サイクルの包括的な再検証を日本に求めた。

 半世紀以上に及ぶ国策は、経済性と安全保障の両面から岐路を迎えている。

2018年7月19日 無断転載禁止