受動喫煙防止法成立/さらに改善が必要だ

 他人のたばこの煙を吸わされる受動喫煙を防止するための改正健康増進法が成立した。受動喫煙による健康被害を防ぐ第一歩となるが、規制の例外としてたばこが吸える飲食店が過半数に上るという抜け穴がある。国民の健康を守るためには、早期の見直しを考えるべきだろう。

 改正法では、学校、病院、行政機関は屋内完全禁煙とする。職場、飲食店は原則として屋内禁煙とするが、喫煙専用室は設置できる。ただし飲食店のうち資本金5千万円以下、客席面積100平方メートル以下の既存店は「例外」として、店頭に「喫煙可」などと表示すれば、経過措置として店内での喫煙を認める。

 これまでの受動喫煙対策は努力義務にとどまっていたのに対して、悪質な喫煙者に最大30万円、施設管理者に最大50万円の過料を科す。改正法は東京五輪・パラリンピック開催前の2020年4月に全面施行する。

 法改正で焦点となったのは、例外として喫煙できる飲食店の範囲だ。厚生労働省が17年にまとめた当初案では、店舗面積が30平方メートル以下のバーやスナックに限っていたが、自民党の反対で、業態を問わず客席面積100平方メートル以下の店と、範囲が大幅に拡大された。

 厚労省の試算では、この例外規定により、喫煙専用室を設けなくてもたばこが吸える飲食店が55%ある。原則より例外の方が多いのは本末転倒で、「原則禁煙」は骨抜きにされたと指摘される。

 厚労省は、例外規定は経過措置で、改正法の施行後に開店する店は一律禁煙としたことで段階的に受動喫煙を減らす道筋を付けたと説明する。しかし経過措置をいつ見直すかは明らかにしておらず、禁煙店がどの程度のペースで増えるかの見通しもない。

 当面、改正法の実効性を少しでも高めるための継続的な努力が求められる。まず法施行後、職場や飲食店などの実態調査と指導監督の強化などの施策が欠かせない。これと並行して、例外とされる飲食店の範囲をできるだけ早く縮小することを柱に、もう一段の規制強化に向けた検討を急ぐべきだ。

 6月に成立した東京都の受動喫煙防止条例は、従業員を雇う飲食店を原則禁煙としており、都内の飲食店の84%が対象となる。国より厳しい規制で、国際オリンピック委員会(IOC)の「たばこのない五輪」という要請に応える。だが、この条例ですら「屋内全面禁煙」という世界標準には達していない。改正健康増進法の内容はそれをさらに下回っている。

 世界保健機関(WHO)によると、飲食店や職場など多くの人が利用する8種類の施設すべてに禁煙を義務付けている国は55カ国。日本は改正法の施行後でも、完全禁煙となるのは病院など3種類にとどまる。受動喫煙対策の評価は4段階の最低ランクから1段階上がるにすぎない。

 国立がん研究センターの推計では、日本で受動喫煙が原因で死ぬ人は年間約1万5千人で、交通事故の死者数の4倍に上る。受動喫煙対策の強化は、国民の命と健康を守るための最重要課題の一つである。極めて不十分とはいえ、対策の枠組みはできた。次はこれを改善し、大きく育てなければならない。

2018年7月20日 無断転載禁止