西日本豪雨 江津・川越唯一の商店再開 常連客支えで笑顔戻る

営業を本格的に再開した店内で、住民と談笑する原田重信さん(左から3人目)=20日午後6時48分、江津市桜江町川越
 西日本豪雨による河川の氾濫で、全世帯の3分の1の約100世帯が浸水被害を受けた島根県江津市桜江町川越地区で、唯一の商店「原田酒店」が20日、営業を本格的に再開した。酒類や食品が水に漬かり、大型冷蔵庫も壊れ、店主の原田重信さん(69)は「もう終わった」と廃業を考えたが、常連客らの支援を受けて立ち上がった。地域の憩いの場でもある店の再始動に、住民の喜びはひとしおだ。

 江の川と田津谷川の合流点近くにある川越地区は、二つの川から流れ出た濁流にのまれ、桜江町内で最も大きな被害を受けた。

 原田さんの店舗兼住宅も床上1.2メートルまで浸水し、日本酒や焼酎計約120本の瓶が割れ、ラベルがはがれた。乾物やカップ麺も漬かり、全体の3分の1の商品を廃棄することになった。冷酒やビールを保存する大型冷蔵庫も横倒しになって壊れた。

 先々代が約80年前に創業し、住民に長年親しまれてきたが、被害の深刻さと激安店の進出で厳しい業況を踏まえ、店を閉じることも考えた。途方に暮れていた原田さんを救ったのが常連客らの手助けだった。被災直後から駆けつけた10人が炎天下、泥のかき出しや商品の洗浄作業に汗を流す姿に、「またやろう」との思いが固まった。

 約20平方メートルの店内にはテーブルと長いすがあり、夕方になると近くの住民が集まり、酒を飲み、歌を歌った。営業再開に先立ち、浸水した木製のテーブルと長いすを業者に頼んで研磨し、再塗装して備えた。

 20日は午後6時半ごろから4、5人の常連が新しくなったテーブルを囲み、いつものように冗談を飛ばし合い、笑い声が響いた。近くの会社員横田真二さん(62)は「あまりの惨状に、正直、もう駄目かと思った。みんなが集える場が残ってくれて本当に良かった」と笑顔を見せた。

 常連客に囲まれた原田さんは「地域の人々に支えられ、店を開けられた。これからも人が集い、にぎやかに過ごせる店でありたい」と力を込めた。

2018年7月21日 無断転載禁止