災害時の情報伝達/検証し早期避難目指せ

 多くの犠牲を出した西日本豪雨の現場では、まだ安否不明者の捜索が続き、住宅被害のほか、農地、鉄道などの復旧も長期化が懸念されている。被害拡大の一因となった避難情報の伝達、周知の課題を考えておきたい。

 予想降雨量が災害に直結するレベルであることは早くから明らかだった。気象庁は5日午後には台風以外では異例の緊急会見を開き、関係省庁にも警戒を呼び掛けた。ただ、それが国民にどれだけ深刻に受け止められていたか。政権は「初動対応は万全だった」と正当化するばかりでなく、情報発信の在り方について謙虚に検証するべきだ。

 特に発信のタイミングと手段は妥当、十分だったか。対象地域を決める基準や言葉遣いも専門家の知恵を借りて見直してほしい。放送やインターネット、携帯端末など伝達手段は多様だが、そうしたメディアになじみのない人もいる。自分では逃げられない独居高齢者や要介護者にどう伝えるか。地域の共助、見守りが果たす役割も重視した制度設計が望ましい。

 今回の豪雨では、事態が広域で急速に進んだ。ただ河川の氾濫、浸水、土砂災害の多くはハザードマップ(危険予測地図)の想定内だった。しかし避難指示が深夜、未明だったことなどで多くの人が、自宅や周辺で濁流にのまれ、想定が生かされなかった。

 ハザードマップは、浸水の恐れがあるほぼ全ての市町村で作成済みだが、農水省のデータで、決壊などで被害の出る恐れがある全国1万カ所以上の「防災重点ため池」は、約35%しかハザードマップが公表されていないことも分かった。危険箇所が強調されれば地価に影響するとの懸念があるという。しかし長期的にはむしろ、安全な町並みをつくる手掛かりになるのではないか。

 マップは、浸水域が一目で分かることは大前提だが、どんな状況なら、どの経路で逃げるのかも、地域ごとに住民を交えて検討し、反映したい。作成の指針や避難所の環境改善、危険箇所の改修などで、国の一層の支援も不可欠だろう。

 避難準備・高齢者等避難開始、避難勧告、避難指示(緊急)、特別警報などの区分と用語の見直しを求める声も一考に値する。ただ最終的に身を守るのは一人一人の瞬時の判断だ。どう名付けたとしても、受け止める側の意識が伴わなければ実効性は薄い。

 自然の力は人知をやすやすと超え、どれだけ予測、予報の精度が向上しても不測の事態があり得る。避難に手助けが必要な人たちのことを忘れてはならないが、それは、地域住民に早期避難の意識が徹底すれば、おのずと解決策が見いだせるはずだ。

 遠回りでも、防災教育を一層充実させることも必要だ。

 豪雨災害のほか、地震や津波、火山噴火にも共通して言えることだが、地域で過去に起きた災害には教訓がたくさんある。将来も起きる可能性があるそうした災害の実相を、大人も子どもと共に学び、自分で危険を感じ取る力を養いたい。

 「いざというとき」が来る前に、場合によっては行政の呼び掛けに先立って「念のために逃げよう」と言い合えること、それが災害に強い社会につながる。

2018年7月22日 無断転載禁止