GIブルース

 「GIブルース」は米国の歌手、エルビス・プレスリーのヒット曲である。人気絶頂中の60年前徴兵され、派遣された西ドイツ(当時)での軍隊生活を歌ったが、ブルースなのに歯切れの良い行進のリズムに合わせた曲は、米国への郷愁にあふれる▼GIとは米兵の意味だが、GIカットと呼ばれるヘアスタイルから軍靴まで官給品の略語でもある。冷戦時代の西ヨーロッパ駐留米軍は、北大西洋条約機構(NATO)のリーダーとして旧ソ連の軍事的脅威に対峙(たいじ)していた▼その米欧の軍事同盟であるNATOにトランプ米大統領が揺さぶりをかけている。例によって「カネを払え」のディール(取引)戦術。米国の軍事費によって安全を守られているのに、それに見合う負担をしていないとして加盟国に防衛費の引き上げを求めている▼特に風当たりが強いのが、欧州の盟主といわれるドイツ。経済力では欧州で抜きんでるが「ロシアには天然ガスやエネルギーに何千億円も支払っている」と軍事も通商もごちゃ混ぜにして攻め立てるトランプ流▼NATO離脱までほのめかす調子で日米安保条約にも「口撃」されたら、とはらはらさせられるが、この人の言うことは日替わりのように変幻自在なので額面から割り引きながら、全体の文脈で解釈するしかない▼ライン川の美しい眺めよりテキサスが懐かしいとGIブルース歌詞。アメリカ恋しとプレスリーが歌った当時の米国の太っ腹は、今は昔とNATOのブルースならぬ嘆き節が聞こえてくる。(前)

2018年7月23日 無断転載禁止