公文書管理見直し/政治家の意識改革を

 財務省による学校法人「森友学園」を巡る決裁文書の改ざんや、防衛省・自衛隊の派遣部隊の日報隠蔽(いんぺい)問題を受けて、政府は公文書管理の在り方を見直し、再発を防止する対策をまとめた。

 各府省庁の文書管理に対する内閣府の監視権限の強化や電子決裁システム移行の加速化などが柱だ。改ざんのような悪質な事案には免職を含む懲戒処分を行うよう人事院で検討することも盛り込んでおり、適正な文書管理に向けて一定の効果はあるだろう。

 だがいずれも対症療法であり、保存すべき公文書の定義の見直しなど公文書管理法の改正には踏み込まなかった。外部のチェックが入らない仕組みで抜本的な対策となるのかは疑問だ。

 今回の事案を受けて、何よりも求められるのは、政治家の側の意識改革だろう。財務省の文書改ざんは、政権への官僚の忖度(そんたく)が招いたのではないか。日報隠蔽では防衛相の指導力不足が指摘される。そして提出された文書の改ざんで侵されたのは「国権の最高機関」である国会の権威であり、行政監視の権能だ。

 安倍晋三首相は再発防止策をまとめた閣僚会議で「危機感を持って再発防止に全力を尽くす」と述べた。だが一連の事案に対して国会や内閣が本当に厳しく対処し、政治家がきちんと責任を取る姿勢を示しただろうか。

 公文書管理法は、公文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と位置付け、国民主権の理念」に基づき「現在および将来の国民に説明する責務」を全うするために適正に管理・保存するよう定めている。改ざんなどは議会制民主主義の土台を揺るがす重大な事態であることを政治家の側が再確認し、官僚を指導すべきだ。

 政府の再発防止策は、公文書に関する法令順守のための改革として、職員研修の強化、人事制度、体制強化などを列挙。内閣府で特定秘密保護法の運用状況を点検する独立公文書管理監を局長級に格上げし、事務局として「公文書監察室(仮称)」を設置。常時監視の体制とし、各府省庁にも「公文書管理官室(仮称)」を新設する。

 研修は各府省庁の公文書担当幹部や、新規採用職員にも実施。公文書の管理状況を職員の人事評価に反映させ、昇進や給与に影響させる。

 しかし課題は多い。一つ目は政府内部の監視で本当に機能するのかという点だ。識者の多くは、会計検査院のように独立した第三者機関を設置すべきだと指摘する。大幅な人員を充てるのが難しければ、国立公文書館の権限・機能の改編も検討すべきだ。

 二つ目は公文書の定義だ。公文書管理法は対象とする文書を「職員が組織的に用いるもの」とし「組織共用」に限定している。このため政策決定過程の検証上重要な文書が職員の「個人的メモ」として作られれば公文書として扱われなかった。公文書の定義を広げる法改正は不可欠だ。

 立憲民主党など野党は、公文書改ざんに対する罰則規定を新設する改正案を提出している。ただ罰則規定によって官僚が文書を残さなくなる懸念も指摘される。政府の再発防止策は懲戒処分を明示する方向で人事院で検討するとした。実効性のある処分指針の策定を急ぐよう求めたい。

2018年7月23日 無断転載禁止