熱中症対策/新たな災害と捉え備えを

 日本列島で続く記録的な猛暑は、気象庁が「命の危険がある暑さ。災害と認識している」と表明する水準に達した。未体験の暑さは、高齢者や子どもなど、体温調節機能が弱い「熱中症弱者」にはまさに命取りとなる。厳重な警戒が必要だ。

 長期的には地球温暖化の影響で、異常な高温の増加が予想されている。その上日本は世界でも例のないスピードで高齢化が進んでいる。今年の猛暑を一過性の異常気象と受け止めるのではなく、深刻な健康被害をもたらす新たな災害と捉え、継続的な備えを強化すべき時期に来ている。

 気象庁によると、連日の暑さは、日本上空に重なるように張り出した太平洋高気圧とチベット高気圧が居座っていることによる。晴天が続いて強い日差しが照り付けたことに加え、2層構造になった高気圧からの下降気流が地表付近の空気を圧迫し高温をもたらした。

 内陸部ではフェーン現象も加わり、23日には埼玉県熊谷市で41.1度と国内最高気温を記録し、5年前に高知県四万十市で観測された41.0度を上回った。東京でも観測史上初の40度超えとなった。この暑さは、少なくとも8月上旬まで広い範囲で続くと同庁はみる。

 熱中症による救急搬送数も記録的だ。総務省消防庁によると、今月16~22日の1週間に全国で過去最多の2万2647人(速報値)が搬送された。死者は28府県で65人。昨年の死者数を1週間で上回った。

 救急搬送されるのは熱中症患者の一部だ。日本救急医学会がかつて、全国の医療機関の診療報酬明細書を分析したところ、夏季4カ月間の熱中症による救急搬送者数が約5万9千人だった2013年には、約40万人が熱中症関連の症状で受診していたことが明らかになった。専門家はこの時点で既に「災害と呼ぶべき規模だ」と指摘していたが、今年の患者数がこれを大きく上回ることは確実だろう。

 炎天下での肉体労働や学校の集団行事、スポーツなどが危険なことはかなり知られてきた。熱中症への注意が呼び掛けられているときには活動を中止する、比較的涼しい時間帯に変更するなどの柔軟な対応が必要だ。また大人よりも身長が低い幼児は、地面から反射される熱の影響を受けやすいことも意識したい。

 高齢化が進む日本で特に注意を要するのは、住宅内での発症だ。高齢者では住宅での発症が半数を超えるという。

 高齢者は全身に占める水分の割合が低く脱水になりやすい上、暑さや喉の渇きを自覚しにくく、体に熱をため込みやすい。また、持病があることも多いため、日常生活の中で徐々に熱中症が進行し、周囲の人が異変に気付いたときには既に症状が悪化していることも多い。都市部では夜も気温が低下しにくいため、夜間も熱中症のリスクがあることを知っておきたい。

 熱中症は、高温を避け、水分と塩分をこまめに取ることなどで予防可能だが、自ら予防する力に限界がある熱中症弱者の発症を防ぐには周囲の見守り力が問われる。1人暮らしの高齢者が増え、高齢世帯の孤立化も加速している。地域や社会で効果的な予防策を考え、高温時の暮らし方を見直していく必要がある。

2018年7月25日 無断転載禁止