G20会議/貿易摩擦解消へ結束を

 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、トランプ米政権の保護主義に発する貿易摩擦に危機感を示したが、具体策は打ち出せなかった。G20の限界が明らかになった形だが、貿易摩擦による世界経済の失速を回避するため、関係国が結束を強め、米国の政策転換を求めていかなければならない。

 共同声明は、貿易摩擦の激化で「世界の経済成長の下振れリスクが増している」として、関係国に「対話と行動」の強化を求めた。しかし、米国と中国が今月6日に制裁関税を発動し、「貿易戦争」に突入して以降初の多国間協議だったにもかかわらず、報復の連鎖を食い止める実効策は提示できずに終わった。

 一方では、今回も米国の主張を入れて「不公正貿易への対抗措置」の役割を容認し、貿易摩擦の素地を残した。会議では幅広い輸入品に関税を課す米国の保護主義的な通商政策にほぼすべての国が懸念を表明したが、保護主義と闘うというG20のメッセージは不鮮明になっている。

 10年前のリーマン・ショックを機に強化された多国間の協調体制が、孤立を恐れないトランプ米政権の「米国第一主義」により、本来の力を失っている実態が改めて明らかになったといえる。

 米国はさらに、安全保障上の脅威があれば対抗措置が取れる通商拡大法232条を根拠に、自動車の輸入制限を検討している。同法に基づく米商務省の自動車と自動車部品に関する調査は早ければ今月中にも終わり、トランプ大統領が輸入制限に踏み切るかどうかを判断する。

 この輸入制限には米国内でも批判が高まっている。しかし、トランプ大統領には一連の保護主義的な貿易政策に対する国際的な非難に屈する気配はなく、11月の中間選挙を控えていることを考えると、自動車の輸入制限に突き進む可能性は低くないだろう。このままでは貿易摩擦は拡大の一途をたどり、世界経済に深刻な打撃を与えかねない。

 国際通貨基金(IMF)も米国が仕掛ける貿易戦争で、最悪の場合、世界の国内総生産(GDP)が0.5%、4300億ドル(約49兆円)縮小するとの試算を発表し、強く警告している。自動車の対米輸出額が大きい日本はGDPが0.6%減少し、米国自身は0.8%も落ち込む。貿易摩擦問題の解決は、世界経済の最重要課題の一つである。

 トランプ米政権の登場でG20やG7(先進7カ国)の機能低下が目立つのは事実だが、それに代わる枠組みは見当たらない。当面は関係国がこうした多国間協議の場で結束し、保護主義的な貿易政策が米国にとっても大きな損失を招くことを繰り返し説き、粘り強く政策の修正を求めていくしかあるまい。

 日本が果たせる役割は大きい。日本は環太平洋連携協定(TPP)をまとめ、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)も成立させた。この実績を盾として米国に自由貿易の利益を訴え、米国がTPPに参加するよう説得を続けるべきだ。

 さらに来年6月には大阪でG20財務相・中央銀行総裁会議が開かれる。議長国である日本は、自由貿易を守るため、各国の協調体制を再構築する責務を負う。大役をしっかりと務めたい。

2018年7月26日 無断転載禁止