打ち水で払えない暑気

 幼少期の夏の風物詩で思い浮かぶのは打ち水。夕方になると道路沿いに並ぶ民家で次々と、玄関先や縁側の前にひしゃくで水をまく。少しひんやりしたのを合図とばかりに、遊んでいた子どもは家路に就いたもの。かつての田舎の夏はのどかだった▼打ち水は気温を下げる効果から見直され、近年は催しもある。同様に暑さ対策として広がるかもしれないのが噴霧装置のミスト。長距離勝負のマラソンや競歩競技でよく見掛けるようになった。涼感を誘うし、気温を2、3度下げるとされる。導入した松江市の観光施設で好評という▼それにしても暑すぎる。埼玉県熊谷市で国内最高を更新する気温41.1度を観測した。35度以上の猛暑日は当たり前で、40度超えが大きなニュースになるかどうかの分かれ目のよう▼灼熱(しゃくねつ)のような他地域と比べれば松江の暑さはまだまし、と油断はできない。熱中症の危険度の尺度は気温だけではない。湿度と日差しの強さを加えた3要素の暑さ指数が重視され、予防情報サイトを環境省が設けている。それによると、松江も連日のように日中は危険領域の指数31度以上だ▼熱中症疑いの死亡例が各地で出ている。豪雨に続く異常気象。ついに気象庁は暑さを災害と宣言した。大雨の特別警報のように、高温でも新たな指標で注意喚起する必要があるのかもしれない▼気候変動に関する国連の機関は、2040年に極端な高温のリスクが増すと見通す。水を打ったところで、たやすくは払えそうにない近未来の暑気である。(泰)

2018年7月27日 無断転載禁止