オウム6人死刑執行/検証と継承が必要だ

 坂本堤弁護士一家殺害事件や地下鉄、松本両サリン事件など一連のオウム真理教事件で死刑が確定した教団元幹部ら6人の刑が執行された。「麻原彰晃」の教祖名で知られ「首謀者」とされた松本智津夫元死刑囚ら7人の刑は今月6日に執行された。それから、わずか20日。再び同時執行が行われ、死刑確定者13人全員の執行が終わった。

 上川陽子法相は記者会見で「命を奪われた被害者やご遺族、一命を取り留めた方々の恐怖、苦しみ、悲しみは想像を絶する」と述べた。死刑廃止は国際的な潮流となっており、先の同時執行に内外で批判が高まる中、世論や遺族・被害者の思いを前面に掲げ、死刑制度を存続させる姿勢を改めて示したといえよう。

 短期間で13人もの死刑が執行される異例の展開によって未曽有の凶行を繰り返し、社会を震撼(しんかん)させた事件の刑事手続きは大きな区切りを迎えた。しかし国が確認している6500人以上にも上る被害者の救済は道半ばだ。いまだに多くの人が後遺症に悩まされ、教団の後継団体が約束した賠償金も支払われない。

 さらに遺族も含め高齢化が進む。遺族の一人は「執行はされても被害は続いている」と語った。今なお続く被害から目をそらさず、捜査や裁判を通じて十分解明されたとは言い難い事件の検証と教訓の継承に社会を挙げて取り組んでいくことが求められる。

 法務省は一連の死刑執行について順番の理由を明らかにしていないが、関与した事件の数や教団内での地位などを考慮したとみられている。6日に執行された7人は首謀者である教祖の松本元死刑囚のほか、国家を模した省庁制を導入していた教団内で大臣や長官を名乗っていた。この中にはサリンの製造役もいた。

 今回の執行の対象となった6人は主に実行役。教団内の地位はそれほど高くなかったとされ、地下鉄事件で見ると林泰男や豊田亨ら4死刑囚はサリンの散布役だった。もう一人、元幹部の林郁夫受刑者もサリンをまいたが、自白して事件の真相解明に協力したことから無期懲役となった。

 このように事件における役割分担はほぼ分かっている。ただ入信前に犯罪とは無縁だった若者たちがなぜ凶行に走ったのかは依然として闇に包まれている。松本元死刑囚の指示は絶対で、理不尽な要求に従うことも修行とされ、林死刑囚もサリン散布を巡り「断ればリンチで殺されると思った」などと供述した。

 裁判で弁護側はマインドコントロールで抵抗できなかったと訴えた。ほかに同様の主張をした死刑囚もいたが、マインドコントロールにより責任能力が限定されたとは認められなかった。とはいえ、社会の現実に何らかの違和感を覚え、入信した若者たちの思考がゆがめられていった過程には未解明の部分が多い。

 教団は三つの団体に分かれ、活動を続けている。公安調査庁などは、いずれも松本元死刑囚の影響下にあるとみているが、新たに一定数の信者を獲得しているようだ。

 社会が向き合わなければならない「なぜ」が、この事件には残っている。その風化が懸念され「23年もたつと、現実に起こったことだと想像できなくなっているのが恐怖だ」と話す遺族もいる。重い教訓として胸に刻みたい。

2018年7月27日 無断転載禁止