クローン文化財展 存在感放つ並河さん写真

「バーミヤン石窟38メートルの大仏」(1977年)(左)など並河萬里さんの作品を鑑賞する来場者=松江市袖師町、島根県立美術館
 島根ゆかりの写真家、並河萬里さん(1931~2006年)の作品が、島根県立美術館(松江市袖師町)で開催中の「東京芸術大学クローン文化財展 甦(よみがえ)る世界の文化財~法隆寺からバーミヤンへの旅」で存在感を放っている。天井壁画が再現されている「バーミヤン東大仏」の破壊前の姿などを伝え、来場者に平和の尊さを訴えている。

 世界の貴重な文化財を再現したクローン文化財が並ぶ会場で、並河さんの写真パネル29点は「バーミヤン東大仏天井壁画」を復元した展示室の前後にある。

 天井壁画はアフガニスタンにあった高さ約38メートルの仏像(東大仏)の頭上に描かれていたが、2001年に当時のタリバン政権が仏像を爆破した際に失われた。東西文化融合の象徴ともいわれる同壁画を会場に甦らせたクローン文化財が注目される中、並河さんの写真が相乗効果を生んでいる。

 東大仏と、同時期に爆破された高さ約55メートルの西大仏を1977年に撮影した写真などで、本人のコメントが記された作品もある。

 崖をくりぬいて造られた大仏をはじめ、広大な渓谷を写した「バーミヤン石窟全景」には「念願かなってこの谷に入ったとき、そこには『宗教的静寂』が溢(あふ)れていた」と記され、東大仏を足元から撮影した作品には、東大仏を前に「感動が体の中から湧きあがってきた」と記載。大仏のスケールや平和な村の様子を伝えるとともに、両大仏が現存しない事実を鑑賞者に突きつける。

 並河さんは両親が島根出身。戦争取材を経験後、31歳の時にシリアで遺跡破壊を目の当たりにしてからシルクロードなどの文化遺産の撮影に力を注いだ。

 同展の開幕に合わせ、横浜市から会場を訪れた妻の慶子さんは「夫が残した写真が、文化遺産について多くの人が考えるきっかになればうれしい」と話した。

 同展は山陰中央新報社、東京芸術大学などの実行委員会の主催で8月26日まで(火曜休館)。

2018年7月29日 無断転載禁止