金融庁新体制/地域金融再生に全力を

 金融庁は改革路線を推し進めた森信親長官が退任し、監督局長だった遠藤俊英氏が長官に昇進、新体制がスタートした。

 森氏は地域金融機関の経営安定化に尽力してきたが、残念ながら改善に向けた展望が開けているとは言えない。方針自体は間違っていないが、人口減少などの環境変化に応じた安定したビジネスモデルの構築は難航、規模拡大で経営基盤強化を目指す経営統合も進んでいない。今後は、より丁寧で効果的な手法が必要になる。

 地方銀行などの経営は時間の経過とともに深刻さが増してきている。遠藤新長官は、悠長なことを言っていられない状況であることは百も承知だろう。早急な再生に全力を挙げてもらいたい。

 同庁は新体制発足と同時に、不良債権処理の中枢として機能してきた検査局を廃止して新たに総合政策局を設置するなど組織を大規模に再編した。金融とITが融合したフィンテックや仮想通貨への対応など新たな課題に迅速、適切に対応できるようにするためだ。

 地銀や信用組合、信用金庫などは地域経済の要だが、人口減少、低金利などが経営を圧迫し、本業が赤字に陥っているところも多い。金融は経済の血液だ。これが滞ったままでは、地域経済はますます疲弊してしまう。

 厳しい経営環境にどう向き合うか、自行に必要なフィンテックの開発をどう進めるのか。まずは個別行が努力を尽くすべきだ。一方で行政の側からも時代に合わなくなった規制や指導の在り方を見直す作業が欠かせないだろう。

 官民が協力して地域金融の在り方や将来像を描く関係を強化したい。こうした中から、新規事業のヒントや克服すべき弱点が浮かび上がってくるのではないか。

 低金利下で融資事業をどう運用していくかは難題だ。短兵急に業績向上のみを追い続ければ、返済能力に疑問のある融資に手を染め、結果的に損失を拡大してしまう。スルガ銀行のずさん融資問題で指摘されたケースだ。

 金融庁は一時期、地銀のビジネスモデルの推奨例としてスルガ銀行を称賛していた時期もあった。斬新さに目を奪われ足元が見えなくなっていたのだろうか。不正が疑われる行為を見抜けなかったのなら、情報収集・分析能力に疑いが生じる。まずは当局に対する不信感を払拭(ふっしょく)することが、地域金融改革を進める前提になる。

 経営統合も大型の案件は出ていない。それどころか成功例とみられていた地銀最大手のコンコルディア・フィナンシャルグループ(FG)で不祥事が発覚した。傘下の東日本銀行が根拠が不明確な多額の手数料を融資先に要求するなどしていたとして金融庁が業務改善命令を出したのだ。

 ともにFGを形成する横浜銀行は規模、収益力とも東日本を圧倒している。詳細は調査中だが、今回の問題の背景に、東日本が横浜に対抗しグループ内で存在感を高めようという意識があったのなら、規模が大きく異なる銀行同士の統合は問題をはらんでいるとの見方も出てこよう。

 目的は地域金融の再生だ。そのための経営統合はどんな形が望ましいのか。新たな課題が浮上した。

2018年7月29日 無断転載禁止