木次線への思い

 木次線がなくなるとのうわさを聞きつけた鉄道オタクの女性がやって来る場面から物語が始まる。少しドキリとする幕開けの演劇「木次線、その先へ」が8月11、12の両日、JR木次線を運行する列車を貸し切り上演される▼観劇列車は木次線で初の試み。活性化を図る一環で、出雲大東駅を指定管理する市民団体「つむぎ」が企画した。地元劇団員や三刀屋高校演劇部員らが出演し、木次線にまつわる沿線住民の100年におよぶ喜怒哀楽が描かれる▼木次線は2016年に開業100年、17年に全線開通80年の節目を迎え沿線の市民グループなどが多彩なイベントを開催。18年は同じく山間部を走る三江線廃止に危機感を強め、乗客増につながる具体的な取り組みを展開している▼そのさなかに予期せぬ出来事が起きた。西日本豪雨で終点・備後落合駅の信号ケーブルが寸断し、出雲横田-備後落合間が不通になっている。夏休みを迎えて連日運行する予定だった観光トロッコ列車「奥出雲おろち号」も運休。長引けば影響が深刻化しかねない▼しかし逆境にも住民団体の意欲は揺るがない。サンカクカフェKMSプロジェクトは、雲南市の加茂二十三夜祭で花火の見物客に鉄道利用を呼び掛け、加茂中駅を灯籠で彩った。広野雅昭代表は「一つ一つの行動が鉄路の維持につながる」と確信する▼観劇列車は両日とも最少人数の各回25人に達しておらず、中止される恐れがある。若者たちの挑戦を成功させるためにも、地域からの応援が欠かせない。(道)

2018年7月30日 無断転載禁止