「もう1回、もう1回」

 花火は美しく、はかない。夜空を焦がしながら色鮮やかな花を咲かせ、瞬く間に消えていく。理想と現実、出会いと別れ。諸行無常の風情が多くの人の心を打つ▼人気バンド・Mr.Children(ミスター・チルドレン)のヒット曲「HANABI」は花火を「大切な人」に例える。いつかは別れが訪れて、サビの歌詞のように「もう1回、もう1回」と寄り添うことを望んでも、かなわなくなる。「大切な人」は「大切にしてきた事、夢」に、別れは諦めに置き換えても聴ける▼花火の季節には中学・高校生のアスリートが躍動する。山陰両県でも野球やバレーボールなど各競技の県大会が開かれ、選手たちが酷暑の中、夢に一歩でも近づこうと競い合っている▼仲間と励まし合い、技術的な課題やけがと向き合って、地震や豪雨災害も乗り越えて臨んだ集大成の舞台。しかし、勝ち続けて全国大会に進むのは一握り。最上級生の大半は「最後の戦い」になる▼努力が実り、力を発揮して輝く瞬間が数多くあるだろうが、全てが思うようにはいかない。信じられないようなミスや力の差に、時にがく然とする。頑張った人ほど心の痛みは強い。「もう1回、もう1回」。悔やんでも、同じ場面をやり直すことはできない▼ただ、新たな目標に向けて再出発することはできる。夢は消えても、重ねた努力と仲間との絆は消えない。「あの日の悔しさ、挫折があるから今がある」。いつかそう思えるように、もう1回踏み出そう。人生は長い。最後に笑う人が一番よく笑う。(杉)

2018年7月31日 無断転載禁止