LGBT差別/国レベルの支援拡充を

 LGBTを巡り月刊誌に「彼ら彼女らは子どもを作らない、つまり『生産性』がない」と、行政支援を疑問視する投稿をした自民党の杉田水脈衆院議員に対する批判が広がりを見せている。それを特に問題としない党の姿勢にも厳しい目が向けられ、週末には東京・永田町の自民党本部前など各地で当事者や支援団体が抗議の声を上げた。

 LGBTは同性愛のレズビアンとゲイ、両性愛のバイセクシュアル、体の性と自ら認識する心の性とが異なるトランスジェンダーの頭文字で、性的少数者の総称。身近な人にも相談できずに悩み、職場や学校で差別や偏見、いじめなどにさらされているという切実な訴えが後を絶たない。

 近年、性的多様性を尊重する流れはある。3年前に東京都渋谷区は同性カップルを結婚に相当するパートナーと認める全国初の制度を導入。札幌市や大阪市、福岡市などが続き、企業でも社内制度の見直しが相次いでいる。さらに、お茶の水女子大をはじめ複数の女子大はトランスジェンダーの学生受け入れに向け具体的な検討に入った。

 だが杉田氏の主張と自民党の対応はこの流れに逆行し、全ての国民に「個人の尊重」と「法の下の平等」を保障する憲法とは相いれない。差別解消と人権保護を阻む壁は厚い。遅れている国レベルの支援拡充に本格的に取り組む必要がある。

 「『LGBT』支援の度が過ぎる」と題した投稿で、杉田氏は「生産性」を持ち出し「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるのか」「なぜ男と女、二つの性だけではいけないのか」と持論を展開。「『常識』や『普通であること』を見失っていく社会は『秩序』がなくなり、いずれ崩壊していくことにもなりかねない」などとしている。

 そもそも子どもを産むか産まないかは個人の選択であり、生産性という尺度で評価すること自体おかしい。優生思想の差別的な考えに通じるものがあり、「無理解、悪意に満ちた偏見」「言語道断」と批判が噴出。公明党からも「子どもを産まないことを非難がましく言うのはいかがなものか」と苦言が呈された。

 ところが自民党の二階俊博幹事長は「人それぞれ、政治的立場はもとより人生観もいろいろ」と語り、党として問題にしない考えを示した。杉田氏も批判を意に介する様子はなく、自身のツイッターで「先輩議員から『間違ったことを言っていないから、胸を張っていれば良い』と声を掛けられた」とつぶやいた。

 背景には自民党内の保守派に根強い伝統的家族観がある。これまでも二階氏は「子どもを産まない方が幸せじゃないかと勝手なことを考える人がいる」と発言し批判を受けた。

 自民党は「性的指向、性自認の多様な在り方を受け止め合う社会を目指す」との基本方針を2年前に公表したが、杉田氏の投稿をはじめ、それに反する言動が目立つ。

 13人に1人は性的少数者という民間の調査結果もある。そうした人たちが差別や偏見により十分力を発揮できなければ、社会にとっては損失だろう。性的指向を理由とする差別を禁止する基本法を制定するなど、国としての支援を広げることが求められる。

2018年7月31日 無断転載禁止