墓を考える

 国内外の著名人の墓を巡る文芸研究家カジポン・マルコ・残月さんの講演を聴き、墓について考えさせられた。人となりがうかがえ、会ったこともない先人に思いをはせられるのが魅力で「墓は単なる石でなく、その人。故人と生きている人を結び付けるものだ」と言う▼エルビス・プレスリーの墓は年間70万人が訪れ、ジェームズ・ディーンの墓は故人にあやかろうと削られ、キスマークが付いているといい「いかに多くの人に愛されているか分かる」とカジポンさん▼片や著名人でない一般の人の墓は悩みの種になる。墓参や管理が大変だとして墓じまいが行われ、墓を造らない人もいる昨今。講演会を企画した鳥取県中部石工組合の姫田和雄組合長は「墓の大切さを考えてほしい」と訴える▼墓が負担だと考えられる世の中は何だか寂しい。ただ、人情として会ったこともない遠い先祖に愛着は抱きにくいだろう。言い換えれば、自分の墓に愛着を持ってくれるのはせいぜい孫やひ孫の世代までか。建造後100年たったら風化して消える。そんな墓が造られる時代が来るのかもしれない▼墓の維持を考えるなら、観光名所になっているルーマニアのある村の墓はヒントになる。カジポンさんによると、この村では墓に故人の人生が刻まれ、生前の姿が彩色レリーフになっている。知らない人なのに親しみがわくという▼縁もない他人を楽しませられ、できれば、有料で人が見に来てくれ維持費が賄える墓。墓の行く末を考える上で一つの案だろう。(志)

2018年8月2日 無断転載禁止