けんか別れの不毛

 学問同士でも親戚や兄弟関係のようなものがある。経済学と経営学は親類同士だが、どちらも人間の損得感情に働き掛ける身もふたもない学問と言ってのければ、それこそ身もふたもない。少子化におびえる大学ではともに入学志願者の多い大口需要学部。就職に有利でつぶしが利きそうというイメージでも共通する▼煩わしい定義をはしょって経済学者の飯田泰之氏が、両者の違いを独占の切り口から一刀両断にした。経済学は独占が大嫌いなのに、経営学は大好きというのが飯田氏の見立て▼経済学は個人の利害動機から始まって社会全体の損得を考える。これに対し経営学では企業がどうしたらもうかるかがテーマ。競争を通じて独占を防ごうとする経済学に対し、経営学は真逆の戦略を描く▼お役所に例えれば公正取引委員会が経済学、金融庁が経営学を唱え対立する構図。長崎県で地方銀行同士の経営統合を巡って両官庁が繰り広げたバトルにようやく「終戦」の気配▼統合が実現すると、同県内の企業向け貸出金シェアが一行で70%と独占に近くなり競争が失われると警戒する公取委に対し、統合を推進する金融庁は強い銀行ができれば地域経済は活性化すると譲らなかった。島根県内に例えると山陰合同銀行と島根銀行を合わせた寡占度を上回る▼解決策は「強い銀行」の貸出債権一部を他の金融機関に移してシェアを下げる。理論では隣接しながらもビジネス現場では犬猿の仲となる経済学と経営学。けんか別れでは学問の進歩もない。(前)

2018年8月3日 無断転載禁止