東京医大入試差別/事実なら詐欺的行為だ

 不正入試問題に揺れる東京医科大で、一般入試の受験者の得点を操作し、女性合格者の数を抑えていた疑惑が浮上した。1次試験の結果などを踏まえ女性受験者の得点を一律に減点。2次試験に進む女性を少なくしていたという。

 目標は女性合格者を全体の3割前後にすること。こうした操作をすることを大学側は受験者に伝えておらず、事実であれば詐欺的行為と言わざるを得ない。

 大学病院や系列病院に必要な医師を確保するため、出産や育児で休職したり退職したりする可能性がある女性医師の数を減らすことが狙いだったとされる。

 東京医科大は創立100周年を機に昨年、多様な人材が創造的に学び、働くことができる「安心できる組織づくりと職場環境の整備」に向けた宣言をした。ならば家庭生活との両立を支援し、誰もが働き続けられるようにするのが筋だろう。

 大学が自ら果たすべき課題解決の責任を女性医師の側に押し付け、受験から女性を排除するのは差別以外のなにものでもない。学生を病院経営の道具と見なす考え方も、教育機関にふさわしくない。

 日本の医療現場の多くはいまだ「男社会」だ。2016年の医師全体に占める女性の割合は約2割と、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最低水準にあり、平均の半分程度にとどまっている。

 医学部学生や医師国家試験合格者の女性の割合も大きな伸びは見られず3割ほどで推移しており、OECDの平均に届くことは当分なさそうだ。

 なぜ女性医師が増えないのか。背景には、家庭生活との両立を支援する仕組みに乏しく、突出した長時間勤務を許容する労働環境がある。

 厚生労働省研究班の16年の調査では、病院に勤める20代医師の勤務時間は週平均55時間。そこに緊急呼び出しの待機時間や当直が男性で16時間、女性で12時間加わる。

 日本医師会が病院勤務の女性医師約1万人を調べた結果によると、週60時間以上勤務の割合は25%と男性とほぼ同じだった。仕事を続ける上で、勤務環境の改善や子育て支援が必要だと考える人は約9割に上る。

 現状の改善に向け、厚労省の検討会は2月、医師の負担軽減の緊急対策をまとめた。検査手順や入院の患者への説明などを看護師に任せる業務移管を全ての医療機関で進めるよう求めたほか、1人の患者を複数の主治医で診る仕組みの導入や当直明け勤務の負担軽減を提案している。

 一方で、女性医師が仕事を続けられるよう、短時間勤務など柔軟な働き方を導入するなど、きめ細かな対策も求めた。実現すれば男性側の意識も変わる。女性に対する差別の根を絶つ、有効な手にもなるはずだ。

 気になるのは、他の私立大医学部でも女性合格者の割合を低く抑えるため、同様の得点操作がなされていないかとの見方があることだ。

 病院経営のためにどうしても必要だというのなら、募集要項で女性排除の方針を明示してみればいい。女性医師が歓迎されない病院に果たして患者が行くだろうか。男性医師もそこで働きたいと思うだろうか。医療界の体質に関わる問題だ。

2018年8月4日 無断転載禁止