山陰旅行にいらっしゃい

 作家山田詠美さんの夫は大の水木しげるファンだそうだ。近著のエッセー「吉祥寺デイズ」に、夫妻そろって妖怪のまち境港を訪れた様子がつづられている▼夫の好みでついてきた割には、山田さんもいいノリをしている。境港へ向かうJR境線の鬼太郎列車では「霊」にひっかけた米子駅の「0番ホーム発」に「鬼太郎三昧(ざんまい)になるのを予見」。水木しげるロードを堪能し「すっかり妖怪とお友達になった気分」とはしゃぐ▼帰り際には、小泉八雲の怪談にちなみ島根県立大短大部の学生が発案した土産菓子「ほういちの耳まんぢう」を所望するが、手に入らず地団駄(じだんだ)を踏む。あの衝撃作「ベッドタイムアイズ」でデビューし、とんがったイメージのある山田さんが、こんなにも山陰旅行を楽しんだと知り、うれしくなった▼7月の西日本豪雨で被災した山陰の鉄道網は当初の予想より早く復旧が進む。8月に入ると陰陽を結ぶ大動脈・伯備線が全線再開。予約キャンセルが相次ぎ、悲鳴を上げていた観光業界は一息ついた。盆の帰省時期にも間に合い、子や孫に会えるかどうか、やきもきしていた人も、ほっとしたことだろう▼この夏は観光客はもちろん、帰省客も山陰の見どころを楽しんでほしい。そして、山田さんのように山陰の魅力を自らの言葉で、周りに伝えてもらいたい。それが地域復活へ何よりの早道になる▼山田さん夫妻を、また山陰へお誘いしたい。水木しげるロードがリニューアルし、夜の散歩がいっそう楽しくなったと。(示)

2018年8月5日 無断転載禁止