西日本豪雨1カ月/災害対応の抜本見直しを

 平成最悪の犠牲者が出た西日本豪雨から1カ月。豪雨では多くの地点で観測史上1位の降水量を記録し、氾濫危険水位を超えた河川も続出した。満水となり緊急放流に追い込まれたダムもある。

 「数十年に1度」の大災害が起こると予想される場合に発表する大雨の特別警報が11府県で出された。これまでの経験を超えた雨の降り方と言える。地球温暖化の影響が表れていると考えるべきだろう。この豪雨を警告と受け止め、災害への備えや対応を抜本的に見直すべきだ。

 今回の豪雨では、気象庁と住民らの危機感の共有、住民の早期の避難などに多くの課題を残した。政府も初動対応の在り方を検証する方針という。住民が確実に逃げ被害を軽減するためにも国、都道府県、市町村の役割分担を変えるよう求めたい。

 災害対策基本法では住民の避難の勧告や指示は、住民に身近な市町村長の役割となっている。大雨のとき市町村は、河川の水位や雨量、その見通しについて情報収集や住民からの問い合わせ、避難所の開設など多くの業務を同時に進めなければならない。

 気象台の助言などを受け避難勧告を出すが、災害の経験が少ない首長や職員も多いだろう。空振りを恐れず的確に判断するのは容易ではない。

 広域での記録的な大雨や最大クラスの台風によって被害の発生が懸念される場合は、国や都道府県が、天候が悪化する前の段階から住民に避難を勧告、指示できる仕組みも設けるべきだ。

 気象庁による観測や予測の精度は高い。国は災害が起きてから救助や復旧、復興を支援する事後対応型から脱却し、避難の段階からもっと前面に出るべきだ。その結果、市町村は住民の確実な避難に全力を注ぐことができる。

 同時に現在は、災害の発生後に立ち上げる国の非常災害対策本部も、被害が想定される段階で置けるようにする。荒川が東京都北区で破堤するケースを考えれば分かる。浸水想定区域に住む約120万人が確実に逃げるには、台風の来襲前から行動を始めなければならない。バスの手配など国による人的支援が重要なことが分かるだろう。

 防災省の創設も危機管理の観点から検討すべきだ。自民党行政改革推進本部が防災、原子力防災、復旧、復興に関する司令塔組織の新設の提言を検討している。南海トラフ巨大地震や首都直下地震など桁違いの災害や原発事故に備えるためにも、防災省のように予算と人材をそろえたプロ集団を設置することは有効である。

 防災省には避難勧告などの権限を与えるだけではない。十分な職員数を確保し、平時には地震や水害、土砂災害などを想定した事業継続計画(BCP)の策定を自治体や民間企業にアドバイスするなどソフト対策の支援にも力を入れてもらいたい。

 長期的な視点では市町村の街づくりに期待したい。ハザードマップの作成で水害などの被害を受ける地域は分かっている。堤防やダムなどのハード整備では被害を防ぎ切れない。人口減少や財政難によって道路や水道などのインフラ更新が難しくなっており、安全でコンパクトという観点から、災害の可能性が少ない地域への住民の居住を促す取り組みも進めてほしい。

2018年8月7日 無断転載禁止