東京医科大入試不正/癒着のうみを出し切れ

 一連の入試不正を巡り、東京医科大が内部調査報告書を公表した。トップの理事長主導で、国の支援事業の対象にしてもらうため入試で文部科学省前局長の息子にげたをはかせて合格させ、その一方で系列病院向けに離職率が高い女性医師より男性医師を確保したいとの思惑から、受験した女子の点数を削り合格者数を抑制したとされる。

 少子化の波で、多くの私立大が入学者獲得と生き残りにしのぎを削っているさなか、大学・病院経営の理屈によって入試の公平公正がないがしろにされた。そこに官民癒着の構図まで絡み、行政と大学教育への信頼が根底から揺らいでいる。極めて深刻な事態と言わざるを得ない。

 東京医科大では、昨年の医学科一般入試1次試験で不正は13人に及び、それぞれ8点から45点が加点された。今年は6人。文科省前局長の息子も含まれ、加点は最大で49点だった。少なくとも2006年度の入試以降は得点操作が行われ、女子だけでなく3浪以上の男子も対象になっていたとされる。ただ16年以前は資料が残っておらず、確認できないという。

 こうした不正で一体、何人の受験生が不当に不合格となってしまったのか。医科大はきちんと解明し、謝罪と救済に取り組むべきだ。さらに他の大学はどうなのか。国は本格的に調査に動き、癒着のうみを出し切る必要がある。

 まず明らかになったのは官民癒着だった。文科省の科学技術・学術政策局長だった佐野太被告が東京医科大側から私立大支援事業の対象校に選ぶよう頼まれ、見返りに今年の入学試験で加点により自分の息子を合格させてもらったとして受託収賄で東京地検特捜部に逮捕・起訴された。

 医科大側は前理事長臼井正彦、前学長鈴木衛両被告が贈賄罪で在宅起訴された。両者の間を取り持ったのが元医療コンサルティング会社役員で、受託収賄ほう助で逮捕・起訴されている。汚職は広がり、文科省前国際統括官の川端和明容疑者が便宜を図った謝礼に元役員から約140万円相当の接待を受けたとして収賄容疑で逮捕された。

 川端容疑者は元役員に頼まれ医科大の式典に宇宙飛行士が出席できるよう尽力したとみられる。これで終わりではない。戸谷一夫文科次官は元役員が設けた会食の席に同席したとされ、特捜部は次官の執務室を家宅捜索している。

 私立大に私学助成金を出すなど補助金配分を含め大学行政に大きな権限を有する文科省と、それにおもねる大学。歴代の文科次官3人を含め累計43人が処分された昨年の天下り問題でも指摘された構図だ。この汚職捜査の過程で、一連の得点操作があぶり出された。

 内部調査報告書は、臼井被告が得点操作について「同窓生の子弟をたくさん入れたい」と述べたとし、寄付金を多く集めたい思いがあったとの見方を示した上で「得点調整をした受験生の親から、謝礼を受け取ることもあったようだ」と指摘している。受験生らに一切伏せたまま密室で得点操作をしたのは背信行為というほかない。

 信頼回復は容易ではない。文科省が自身で、どこまで汚職の背景や大学との関係を厳しく検証し、出直しを図ることができるかも問われよう。

2018年8月9日 無断転載禁止