世事抄録 明治150年に寄せて

 今から150年前、日本は封建制度と鎖国・幕藩体制を解体し、殖産産業・富国強兵を核に近代化を開始した。地政学的には、列強の強要に開国した日本が、先進資本主義を目指すか、後進資本主義として服従に甘んじるか、植民地になるかの選択であった。迷わず欧米に追いつけの道を選び、工業化と西洋思想を無批判に受け入れた。それが明治維新である。

 私は、強いられた近代化より国難に立ち上がった「幕末」に近代日本の心を見る。アヘン戦争での清国の敗北・従属と英国の武力と野望に危機意識を強めた下級武士は、新しい国づくりに挑んだ。その思想の一つが、吉田松陰の「かくすればかくなるものと知りながらやむにやまれぬ大和魂」に示された理念の実現に向けた主体の存在と実行だった。

 さて昨今、グローバリゼーションが語られるが、その本質は、150年前に似て、設備投資や賃金が安価で、将来の市場となる後進国への先進国の進出である。他方、地球環境はますます危機的状況を迎えている。真のグローバリズムとは、一部国家の利益ではなく、地球環境保全に立脚した新しい枠組みづくりと実践である。経済立国日本の150年、工業化の裏側は戦争や貧困、公害の歴史でもあった。この豊かさが何によってもたらされ、今後何をすべきか、自然や世界との共存のなかで問い返す良い契機である。

 (埼玉県在住、島根県奥出雲町出身・鬼灯)

2018年8月9日 無断転載禁止