対イラン制裁発動/外交交渉で解決すべきだ

 トランプ米政権がイランに対する経済制裁を再発動した。今回は自動車関連などに限定されるが、11月には原油にも制裁対象を拡大する方針だ。イランは反発し、ウラン濃縮活動を拡大する可能性を示したほか、原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡の封鎖を警告するなど緊張が高まっている。

 イランの核開発問題は解決が難しく、しかも軍事衝突の危険をはらむ。長い交渉の末に2015年、米英仏独中ロの6カ国とイランが、核活動を制限する見返りに制裁を解除する核合意に達したが、わずか3年で暗転した。

 合意から一方的に離脱を表明し、制裁復活に踏み切ったトランプ大統領に大きな責任がある。トランプ政権はイランの影響力拡大を嫌うイスラエルやサウジアラビアに同調し、イラン現体制の転覆が最終目標のように見える。

 こうしたトランプ政権の中東外交の性格は、在イスラエル米大使館の移転にも共通している。また国際合意を無視し、一方的に保護主義的な関税を課して「貿易戦争」を始める身勝手な手法にも似ており、国際社会から受け入れられないだろう。

 イランもレバノンのイスラム教シーア派民兵組織やイエメンの親イラン武装組織を支援するなど、中東をかく乱する行為はやめるべきだ。15年の核合意も核活動の制限を定めただけで最終解決でない。ミサイルの開発問題が含まれていないなど欠点も多い。

 しかし、こうした問題は、米国を中心とする国際社会がイラン政府と交渉して解決すべきで、イラン核合意を達成した国際的な協議の枠組みを使って合意を深め、完全にする道を目指すべきだ。

 イラン国内では経済混乱に抗議するデモが起きている。トランプ氏は制裁の再発動でイラン政府が窮地に陥ると予想し、ロウハニ大統領に首脳会談の開催を要求している。「非核化」の約束を得た米朝首脳会談がモデルのようだ。

 だが、脅しを受けての交渉にはイランは応じないと宣言している。米国のやり方に異論を唱える中国、ロシア、欧州などとの経済関係を強化して乗り切る構えだ。国際合意をほごにすれば、北朝鮮も不信感を募らせるだろう。

 対イラン制裁は日本にとっても、人ごとではない。米国は11月初旬に始まる第2弾の制裁では原油の輸入をゼロにするよう日本など各国に求めている。日本は全原油輸入量の5%をイラン産に頼っており、代替輸入先を探さなければならない。

 トランプ政権はイランとの取引停止の要求を拒否した第三国の企業にも巨額の罰金を科す方針で、米市場から追放される恐れもある。「米国とイランのどちらを取るか」という脅しだ。日本企業は15年の合意を受けイランでの活動を拡大したが、現在は縮小・撤退を余儀なくされている。

 もう一つは、ホルムズ海峡の軍事的緊張だ。同海峡は世界で海上輸送される原油の約4割、日本が輸入する量の8割が通過する。イラン革命防衛隊は最近、この海域で演習を行い、封鎖能力を誇示している。原油価格の高騰は世界経済の大混乱を招く。

 日本は両国と友好関係を持つ。特に米国には強硬策でなく交渉による解決を説得すべきで、日本外交の正念場だ。

2018年8月11日 無断転載禁止