漢字の世界

 漢字の世界は奥が深い。女偏の字は数多いのに、部首としての男はない。国語学者の大野晋さんによると、古代中国が母系社会だったことや、男が漢字を扱っていたことが関係しているという▼女偏に「妬(ねた)む」や「媚(こ)びる」などイメージの良くない字が交じるのも男側からの見方らしい。気になるのは「嫁」や「主婦」など女偏が付く役割は、今も女性が全て担うのが当たり前と見られがちな点だ▼女性差別やセクハラは、そんな先入観や身勝手な思い込みから生まれる。波紋が広がる東京医大の入試差別は、その典型だろう。セクハラ問題では、事務次官が辞任し、財務省や大臣の認識も問われる騒ぎになった▼先日、衆院議長が異例の注文を付けた不祥事や疑惑を巡る政府の対応も、漢字の世界から振り返ると、なるほどと思う。国会答弁では具体的な経緯は曖昧にしたり、はぐらかしたり。某日、某所と言うのに似ていた。この「某」に言偏を付けると「謀(はか)る」。「たばかる」とも読む▼めったに使わない字だが、言偏の右に「狂」と書く「誑(たぶら)かす」の字にも「たばかる」の意味があるようだ。人をだますための作り事を「狂言」と呼ぶからなのだろう▼漢字には日本で作られた字もあり、「姦(かしま)しい」と同じように、男の字を三つ重ねて作った字も「たばかる」と読むそうだ。「男3人寄れば-」の発想だろうか。先入観で見てはいけないが、加計学園の問題では「男たちの悪巧み」という写真が話題になった。まさか、たばかったのではあるまい。(己)

2018年8月14日 無断転載禁止